第18話 黄昏、山奥、陰陽師アジトへ
夕暮れ時。
山の稜線が茜色に染まり、やがて紫へと沈んでいくその境目で――
彩葉たちは、約束された集合場所へと辿り着いた。
「……皆さん、集まりましたね」
コトリが静かに人数を確認し、そこでふと首を傾げる。
「あら……?」
「こいつはレナだ」
「新しい仲間だ」
「よ、よろしくお願いします……!」
レナは慌てて頭を下げる。
オレンジ色のパーカーが揺れ、フードの触角がぴょこんと動いた。
コトリは一瞬だけレナを見つめ――やがて小さく頷く。
「……なるほど。
戦力は多いほうがいいですね」
拒絶は、なかった。
「それでは……行きましょう」
「もう……敵のアジトがわかったんですか?」
「えぇ」
コトリは振り返らずに答える。
「
「んー! んーー!」
六花が誇らしげに胸を張る。
「追跡までできたのか……」
「すげぇな」
「オレは妖怪だから多少は戦えるが……」
ふと、
「影は……どうする?」
「……」
影は一瞬、言葉に詰まった。
「では」
コトリが静かに割って入る。
「影さんは、六花の後ろに隠れていてください」
「六花」
「んーー!」
六花は大きく頷き、影の方を向く。
「……よろしくね?」
そう言っているようだった。
「……よろしく……です……」
影は小さく、けれどはっきりと答えた。
「いよいよ……敵の本拠地か」
「なんだか本の終盤のようで、ワクワクするのじゃ」
「……油断は禁物ですよ」
コトリはきっぱりと言った。
「皆さん、そろそろ行きます。
アジトは……山の奥です」
山道は、次第に険しくなっていった。
人が使うには不自然なほど細く、
舗装などされていない、ほとんど獣道に近い道。
木々は異様なほど生い茂り、
枝葉が絡み合い、月明かりさえ地面に届かない。
「……静かすぎる」
コトリが足を止め、周囲を見渡す。
「結界の外とは……空気が違う」
陽菜が低く言った。
「ここは……」
彩葉が言葉を探す。
そのとき、栞が目を細めた。
「人の道ではないな」
「……気をつけてください」
コトリの声が、さらに低くなる。
隊列の後ろで、レナは必死に足を運んでいた。
「だ……大丈夫です……!」
息を切らしながらも、その目は真っ直ぐ前を向いている。
――逃げない。もうおいていかれたくないから。
それだけは、はっきりと伝わってきた。
やがて。
「……見えました」
コトリが足を止める。
全員が、息を潜めた。
山肌を削るようにして作られた――
古びた社。
朽ちかけた鳥居。
壁に貼られた、無数の符。
地面に刻まれた、不自然な結界陣。
空気そのものが、歪んでいる。
「……あれが……」
彩葉が息を呑む。
「陰陽師の……アジト……」
「数は……」
村正が低く問う。
「十数名……」
コトリは、少し間を置く。
「……いえ、もっといます」
そして、ゆっくりと目を伏せた。
「内部に……
強い霊力反応が一つ……」
その言葉に、空気が一段重くなった。
「作戦は?」
陽菜が問う。
「正面突破」
コトリは、迷いなく答えた。
「相手は既に、結界破壊を試みています。
隠密より……制圧を優先します」
「……分かりました」
陽菜は静かに頷いた。
その時。
彩葉が、一歩前に出る。
「私も……戦います」
その声は、以前よりも確かに強かった。
「よし」
村正が応える。
――そして。
村正は刀を抜いた。
鈍く光る刃が、闇を切り裂く。
「行くぞ」
「んー! んーー!」
「……はい!」
「おう!」
「はい、覚悟は……できています」
それぞれの声が重なり、
決意が一つになる。
夕闇に包まれた山奥で――
戦いの幕が、静かに上がろうとしていた。
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