第13話 桜菊祭・中編
「おい! 何だあれは!?」
悲鳴に近い声が、祭りの喧騒を切り裂いた。
人々が一斉に空を見上げる。
そこにいたのは――
まるで木星のような、歪に丸い巨体。
表面は不気味に脈打ち、中央には巨大なひとつ目が開いていた。
「貴様ら人間どもと――人間どもとつるんでいる奴らよ!」
低く、憎悪に満ちた声が夜空に響く。
「俺は宣言する!
こんな祭り! 破壊し尽くしてやる!!!」
「な、なにあれ……!」
「何だあれ!? 妖怪か!?」
「いや……あれは妖怪ではない」
栞の声は、珍しく緊張を帯びていた。
「古い文献で読んだことがある……
あれは
「中国!? なんでここに!」
陽菜の問いに、巨大な瞳がぎょろりと動いた。
「なんでだと?」
太歳星君は嗤う。
「俺は人間が――だいっきらいだ!
だから潰す。それの何が悪い?」
「そんな……!」
彩葉は拳を握りしめる。
「こんな幸せな祭り……壊させない!」
「やれるものなら、やってみろ」
その瞬間――
空気が歪み、周囲の景色が暗転した。
「これは……?」
「結界じゃ! 気をつけろ!」
栞の叫びと同時に、太歳星君が宣告する。
「断界同盟、太歳星君。
貴様らを、直々に潰してやろう」
「断界同盟……?」
陽菜が言葉を反芻した、その時。
「ほぅ……お前が、あの断界同盟のメンバーか……」
低い声とともに、影がひとつ、結界の縁から現れた。
「……つぶします……」
「
彩葉が振り返る。
「……そして」
もうひとり、鋭い気配を纏った青年が前に出る。
「刀の守護者、
「お久しぶりですね、村正。僕を覚えているかい?」
「当たり前だろ?
江戸の
「暴れたのは、あなただけでしょう?」
陽菜は苦笑し、銃を構える。
「まぁいいです。さて……
戦いといきましょうか」
「かかってこい!」
太歳星君の咆哮と同時に、戦端が開かれた。
「――ストラップ・ニードルバインド!」
彩葉のショルダーストラップが走り、巨体を絡め取る。
「ッ!? これで俺を固定したつもりかァ!!!」
「嘘……一瞬で……!」
拘束は、容易く引きちぎられた。
「俺は神だ!!
この程度の拘束、効かぬわ!!!!」
「合わせるぞ、陽菜!」
「うん!」
「妾も手を貸そう……
妖術・
空気が震え、仲間たちの力が一気に高まる。
「これは……!」
「全能力を底上げする妖術じゃ」
「ありがとう」
「感謝する、栞殿……
――妖刀・
村正の斬撃が、赤い旋風となって走る。
「早い――!?
グァアァァ!? き、貴様ぁ!」
「富士・雷風バレット!」
陽菜の放った一撃が、雷鳴とともに太歳星君の眼を貫く。
「グッ……目が!?
くそが! 呪術・
巨大な眼から、黒い光線が放たれる。
「させない!」
彩葉は前に出た。
おぼろげな感覚で異空間を開き、光線を呑み込む。
「――返す!」
次の瞬間、同じ攻撃が太歳星君へと跳ね返った。
「何ッ!?
グァァァ……!」
「……まだ終わってない……」
猿夢が静かに一歩踏み出す。
「狂気・えぐり出し」
「ぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」
太歳星君の絶叫が、結界を震わせる。
「こんな……ところで……
終われるかァァァ!!!」
「まだやる気?」
陽菜は冷静だった。
「いくら立ってこようと、仕留めるだけだ」
「……うん……」
「つ、強い……」
「まだだ! まだ俺は――!」
「――おしまいだよ?」
鈴の鳴るような声が、戦場に落ちた。
「誰だ!?」
太歳星君が叫ぶ。
その前に、ひとりの少女が立っていた。
小柄な体。
静かな微笑み。
だが、その存在そのものが、異様な重さを放っている。
夜風が吹き、祭りの灯りが揺れた。
――戦いは、まだ終わっていなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます