第7話 改稿案を検討する
今回人間が執筆した『西遷の道に葡萄の風を』に関しては、改稿はしません。
あくまでも、AIvs人間、ということで対決のために書いて、結果どうだったか、という形をそのまま残したいので。
ただ、グロックとチャッピーに採点させて、その中でAB両作品に改稿案も出してもらって、「こうしておけばもっと良かった」と思う部分もありました。ので、B作品を改稿する場合、AIの意見のどの部分をどのように取り入れて、どの意見は切り捨てるか、をここで検討します。
なお、今回のB作品はカクヨムコン11短編部門に参加させたいと考えたため、1万字以内という制限で書いています。なのでそこにこだわると大幅な改稿案などは取り入れられないのですが、仮定の話なので字数制限を考えなかった場合、で考えます。
・グロックA改善案:元二に具体的な過去(例:長安での挫折や家族の胡人との関わり)を挿入し、沙比徳との出会いが「転機」として機能するよう深化させる。
→これに関してはBの中では主人公元撝は左遷により長安からこちらに来たことになっているので、長安での挫折が具体的な過去として盛り込まれています。ほらね、Aに対する改善案として言われているようなことは、B作品は既にやっているのだ。
・グロックA改善案:武官にも「吐蕃に家族を殺された」などの背景を与え、単なる悪役ではなく「恐怖から生まれる排他性」を立体的に描く。
→これも、Bでは武官の立ち位置のキャラである呂承祖がタラス河畔の戦いで弟が未帰還になった、という背景があります。
・グロックA改善案:襲撃者を明確に武官配下とし、元二が証拠をつかむ小さな推理要素を加える。
→推理要素か。Bでは、そもそも実行犯が誰であるかはあまり重要ではないので、そこすら省いてしまったんですよね。実行犯がエピローグの5話の時点で捕まったことにするべきか。推理要素って、現状では范老子の現在の居場所を探す部分だけです。実行犯を推理しても、捕まえる暇も権限も無いので、そこまでは不要と考えます。
・グロックA改善案:密偵告白は事前に微かな伏線(沙比徳の過去の断片的な発言や表情)を散りばめ、読者が「そうだったのか」と納得できるようにする。
→これも、Bの中では范老子が密偵疑惑がある、と呂承祖が言っていて伏線となっています。
・グロックA改善案:天宝期の安西・北庭の緊張(吐蕃との小規模衝突や胡人兵の存在)をもう少し具体的に織り込み、「西州でなければ起こり得ない対立」を強調する。例えば、実際の史実にある「胡人兵の反乱懸念」を背景に据えると必然性が増す。
→ 役人の「胡人を国に入れ過ぎるのは危険ですよ。いつかあいつら、唐に対して叛逆しますよ」という台詞があり、それによって二年後に起きる安史の乱をほのめかすことによって緊張感を描いてあります。西州で起こることではないですが。
・グロックA改善案:同じモチーフを繰り返す際は表現のバリエーションを増やす(風→砂嵐→熱風→静風など)。
→文章表現部分に関しては、そこまで考える余裕が無かったのが実情です。校正段階でAIに具体的に表現バリエーションを変えた方が良い箇所を指摘させた方がいいかもしれません。
・グロックA改善案:告白の意外性を高めるため、沙比徳が「吐蕃に情報を流した結果、誰かが死んだ」などの重い罪を抱えている設定にすると、赦しのテーマが深まる。
→吐蕃に情報を流したから、ではないが、范老子の妻と娘が吐蕃に殺されている。また、范老子が吐蕃と密通していた時期が金城公主の輿入れの難しい時期だった、というのがあるので、范老子(若い頃)の密通によって唐と吐蕃の関係が難しさを増した、というふうにはなっている。
・グロックB改善案:范老子の告白シーンで、過去の妻・娘への思いを具体的な回想として挿入し、感情の重みを増す。
→確かに妻と娘に関することは具体性までは踏み込めていませんでした。告白シーンで具体的な思い出を述べさせると冗長になりそうなので、范老子に家族がいない、過去にはいた、ということを前半のどこかで伏線として出した方がいいんじゃないかな。
・グロックB改善案:呂承祖に演奏を聞いての心の揺れを一言でも描写すると、関係性の変化がより立体的になる。
→これは納得できる改稿案。最後の演奏場面で、主人公がふと横を見た時に呂承祖が立っていて、呆然とした表情で演奏を聴いていて、「異国人を許すつもりは無いが、音楽に罪は無いのかもな」とか呟かせるのがいいかもしれない。
・グロックB改善案:聞き込みシーンを圧縮し、元撝が呂承祖と対峙する場面を一本化。
→これはなかなか難しい。一本化は困難だけど、元撝vs呂承祖のシーンをもっと劇的にできればいいのかもしれない。
・グロックB改善案:クライマックスは范老子が痛みを堪えて最後まで弾き切る形にし、他の楽人によるリレーは余韻として短く描写すると焦点が絞れる。
→これはどうなんでしょう。少年マンガとかでよくある、最終決戦で主役がピンチの時に今までかかわった人たちが全員集合で助けに来てくれる展開的なカタルシスを目指したのですが、そこまで描き切れなかったのは事実。ただ、Aの改稿案で言われていた、祭りは正式には中止になるが非公式で演奏、という部分でもあるので、他の楽人の演奏を短くするのも違うと思う。
・グロックB改善案:史実説明を会話に自然に溶け込ませ、叙述での長めの解説を減らす。会話は短く切り、必要な説明は行動や情景で示す。
→歴史小説を書くにあたっての一番の問題点がだいたいコレ。会話はコンパクトにして、それを地の文で補足して歴史説明とする形が多いのだが、そこが難しい。
・グロックB改善案:音楽シーンでは音のイメージをより鮮やかに(例:弦の振動、風との共鳴)描くと叙情性が増す。
→言い訳的になるけど、今回は1万字の文字数制限を気にしながらの執筆だったため、前半の状況提示に文字数を費やしてしまい、後半は使える文字数が少なくなってしまった。なのでクライマックスの演奏シーンでの描写も非常に浅くなってしまったのは事実です。文字数制限を考えずに書くなら、そこの描写を厚くするべきでしょう。
・グロックB改善案:分散演奏のアイデアをさらに強調し、「一人の終わりが皆の始まり」という継承感を強く出すと独創性が増す。
→これは素直に良いですね。そういう文章を挿入すると良いと思います。
・チャッピーA改善案:元二には一度は体制側に立とうとする、迷って決断が遅れる、などの逡巡の時間を追加する。
→文字数制限があるので、逡巡等は書けなかった。というか、クライマックスのテンポが悪いと言われているのに、逡巡も書きますかね。
・チャッピーA改善案:クライマックスで民衆が分裂する。民衆も、反対派と支持派を分ける、逡巡する群衆を描くと、舞台の厚みが増す。
→クライマックスを盛り上げることに異議は無いですが、長くなるとテンポが悪くなる。あと、B作品では、「道行く人々の中にも、范老子の演奏に気付いて足を止めて聞き惚れている者もいる。その一方で足早に立ち去る者もいた。」「音楽祭の中止を叫んでいたが、それによって追い返す人数よりも広場に集まって来る人数の方が多いようだ。」と、音楽から離れる人、追い返されただけでさっさと帰る人、を描くことによって群衆も一枚岩ではないことは部分的に描いている。
・チャッピーA改善案:武官が強硬に介入し、一時は祭りが失敗しかける。など、もう一段の危機を作る。
→役人の介入で誰も舞台には立てなくて祭りは失敗しかけていて、そこから広場の外での演奏の連鎖へとつなげている。
・チャッピーA改善案:結末を、完全な感動路線ではなく、何か一つ苦味を残す(例:武官は失脚するが、後任はさらに苛烈など)と、独自色がさらに強まる。
→役人が主人公に対して「いつかあいつら、唐に対して叛逆しますよ」と言っている通り、二年後の西暦755年に安史の乱が発生する。B作品に既にあるこの台詞は苦みの隠し味である。
・チャッピーB改善案:呂承祖と范老子の直接対決の場面を一度作る。
→これはチャッピーがBに対して言ったにしては良い改稿案。別のところで検討した通り、最後の演奏場面で、主人公がふと横を見た時に呂承祖が立っていて、呆然とした表情で演奏を聴いていて、「異国人を許すつもりは無いが、音楽に罪は無いのかもな」とか呟かせるのがいいかもしれない。みたいなシーンを入れていい。
・チャッピーB改善案:李林甫・楊国忠の政争は、→ 元撝の動機に直結させるか、→ 思い切って削る。
→これは論破した通り。政争は、A作品では全く描かれていなかったけど、B作品ではちゃんと描かれていて、それが主人公の動機になっていました。
……こんなところでしょうか。
特にA作品に出された改稿案が、B作品の中では既に描かれているケースが多い、ということが明確です。
今回は、AIと質を競う、というコンセプトだったため、プロットから本文執筆して、そのまま公開する、という流れでした。
1万字以下の短編作品などの場合は、本文執筆の後で校正も兼ねて一度AIに完成品を読ませて、改善案を出させてクオリティアップを図るのが良いかもしれません。
というわけで、ここまで長々と創作論エッセイとしてやってきました。
AIを一切使わなくても『夢は巡るトルファンの胡旋舞』ぐらいのクオリティの作品は書けます。
だけどAIを使えば時間と労力を大幅に節約できる。
少なくともカクヨムでは「AI補助利用」に関しては問題とされないでしょう。ランキング汚染になりうる量産さえしなければ。
なので、今後はAIとどう上手く付き合って行くか、を考えるのが良さそうです。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
この創作論エッセイが面白いと思ったら★評価、フォロー、ハート、コメント等よろしくお願いします。……と言いたいところですが、エッセイよりも作品を読んでもらいたいです。
『夢は巡るトルファンの胡旋舞』
https://kakuyomu.jp/works/16818622171552270131
『西遷の道に葡萄の風を』
https://kakuyomu.jp/works/822139842574549750
これらの作品をぜひ読んでください。どちらもトルファンが舞台の作品です。
AIに戦力外通告された俺が、AIに小説執筆勝負を桃んでリベンジするリアル追放ざまぁ譚 kanegon @1234aiueo
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