オーディション詐欺に引っ掛かりかけたけど回避した話。

橋元 宏平

夢を悪用されるオーディション詐欺

 15歳の頃、本気で声優になりたいと思っていました。

 ある日、新聞にはさまっていた「声優オーディション」の募集チラシを見つけました。

 合格して、養成所に入れば誰でも声優になれるという内容です。

 あきらかに怪しいですね。


 しかし夢見る小僧は、目を輝かせて食いつきました。

 さっそく、親に「オーディションを受けさせてくれ」と頼みました。

 もちろん、親は反対しました。

 親として、当然です。


 どうしてもオーディションを受けたかった小僧は、「受けるだけでもいいからっ!」と、粘りました。

 ついに、親は根負こんまけして「受けるだけなら」と許してもらえました。

 小僧は大喜びで、オーディションに申し込みました。


 数日後、「○月×日□時、◇◇へお越しください」といった案内書がました。

 アッパラパーな小僧はまんまと釣られて、ホイホイ行きました。

 バカですね。


 指定された会場には、たくさんの人々がいました。

 たぶん、サクラ(仕込みの客)もいたのではないでしょうか。


 コミュ強小僧は、オーディションを受ける人々に声をかけまくりました。

 ここに集まっている人は、声優になりたい声優オタクばかりです。

 すぐに打ち解けて、友達になりました。


「俺、○○さんに憧れててー」

「分かるー、私も好き! めっちゃ良い声だよね~っ!」

「僕も、あんな声に産まれたかったーっ!」


 そんな話題で、盛り上がりました。

 しばらくするとスタッフに呼ばれ、面接会場へ移動します。

 自分の番が回ってくると、緊張と期待でドキドキワクワクです。


 数名の面接官の前で、志望動機などの受け答えをしました。

 マイクの前に立たされて、受付で渡された台本を読んで演技をします。 

 至って普通の面接でした。

 合否ごうひ(合格・不合格)は、封書で追って知らされるとのことでした。


 面接が終わると、その場で出来たばかりの友達とカラオケやゲーセンへ行って遊びました。

 連絡先を交換して、別れました。


 それから数週間後、合格通知が届きました。

 小僧はドヤ顔で、家族に報告しました。

 バカですね。


 しかし、同封された資料のお値段異常に驚きます。

 養成所の入所料やレッスン料が、めちゃくちゃ高額だったのです。

 金額が書いてあるだけ、親切な詐欺だったのかもしれません。


 浮かれていた小僧は、急に冷静になりました。

 すぐに、同じオーディションを受けた友達たちと連絡を取りました。


「オーディションの結果、どうだった? 俺、合格だったんだけど」

「私も合格だった」

「僕も」

「全員合格って、おかしくね?」

「これ、絶対詐欺じゃない?」

「だよね」


 なんと、連絡した友達全員が合格していたのです。

 さすがに詐欺だと確信し、友達は誰ひとり入所しませんでした。

 ギリギリのところで被害にわず、社会の闇を知ったのでした。

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