第2話

「神話……級?」


俺は震える手で、足元に転がっていた「それ」を拾い上げた。

見た目は、どこにでもある薄汚れた石ころだ。


だが、俺がそれに触れた瞬間、脳内に機械的なアナウンスが響いた。


**『ピロン♪』**

**【鑑定完了】**

**【アイテム名:アダマンタイトの原石】**

**【ランク:神話級(ミソロジー)】**

**【解説:神の武器を鍛えるための素材。国家予算規模の価値がある】**


「……は?」


思考が追いつかない。

アダマンタイト。

伝説の金属だ。過去に一度だけ発見された時は、それを巡って大国同士の戦争が起きたと教科書で読んだことがある。


そんな国宝レベルの代物が、なんでこんな泥の中に?


「いや、待てよ……」


俺は恐る恐る、視線を横に向けた。

そこには、さっきケビンたちが倒したボスの死骸――『アビス・イーター』の巨体が横たわっている。


ケビンたちは「チッ、またドロップなしかよ」と吐き捨てて去っていった。

通常、魔物を倒すと死体は光の粒子となって消え、運が良ければ宝箱や素材を残す。

死体が残っている=ドロップ判定に外れた「ハズレ」というのが、この世界の常識だ。


だが。


今の俺の目には、その死骸が**「黄金の光」**に包まれて見えていた。


**【対象:アビス・イーターの死骸】**

**【ドロップ判定:成功(100%)】**

**【管理者権限により、全ドロップテーブルを開放します】**


「全ドロップ……テーブル?」


ゴクリ、と喉が鳴る。

俺は吸い寄せられるように、ボスの死骸に手を触れた。


その瞬間。


**カァァァァァッ!!**


死骸が強烈な光を放ち、弾け飛んだ。

そして、その場にジャラジャラと大量のアイテムがぶちまけられた。


**『ピロン♪』**

**【獲得:アビス・イーターの牙(S級素材)×2】**

**【獲得:深淵の竜皮(S級素材)×1】**

**【獲得:魔核(S級素材)×1】**

**【獲得:上級回復ポーション×10】**

**……**


「う、嘘だろ……」


目の前に積み上がったのは、Sランク素材の山。

これだけで、俺の10年分の年収は軽く超える。

ケビンたちが血眼になって探していたレア素材が、ここにある。


だが、ログはまだ止まらない。


**『ピロン♪』**

**【レアドロップ判定……成功】**

**【エクストラドロップ判定……成功】**


**【獲得:聖魔剣『グラム』(神話級)】**


カラン……。


素材の山の頂点に、漆黒の鞘に収まった一本の剣が落ちてきた。

その剣から放たれる威圧感だけで、肌がビリビリと痺れる。


俺は震える手で、その剣を握った。


ズシリと重い。だが、不思議と手に馴染む。

鞘を払うと、闇を切り裂くような蒼い刀身が露わになった。


**【聖魔剣『グラム』】**

**【攻撃力:9999】**

**【特殊効果:装備者の全ステータスを100倍にする】**

**【特殊効果:自動修復、魔力無限供給】**


「はは……なんだこれ」


攻撃力9999。

確か、勇者と呼ばれているケビンの聖剣ですら、攻撃力は500程度だったはずだ。

桁が違うなんてレベルじゃない。バグだ。完全にバグってる。


俺は剣を握りしめ、立ち上がった。

全身に力が漲(みなぎ)ってくる。

今まで重くて仕方なかった80キロのリュックが、羽のように軽く感じる。


これが、俺の力?

いや、『管理者権限』の力なのか。


「……あいつら、損したな」


ふと、ケビンたちの顔が脳裏をよぎる。

彼らはこのボスを「ハズレ」だと見捨てた。

俺という「荷物持ち」と一緒に。


だが、その結果どうだ?

俺は今、国一つ買えるほどの財宝と、世界最強の剣を手にしている。


「帰ろう」


俺は『グラム』を腰に差した。

ポーションの瓶を拾い、飲み干す。


「生きて地上に戻る。そして……」


俺を見下し、踏みにじった連中に思い知らせてやるんだ。

お前たちが捨てた「ゴミ」が、お前たちの喉元に食らいつく瞬間を。


**ギャアアアアアアッ!**


その時、通路の奥から魔物の咆哮が響いた。

血の匂いを嗅ぎつけたハイエナたちが集まってきたらしい。


以前の俺なら、悲鳴を上げて逃げ出していただろう。

だが今は――。


「ちょうどいい」


俺はニヤリと笑った。

新しい力の「試し斬り」には、おあつらえ向きだ。


「面白い!」「続きが気になる!」と思ったら、記事下の【☆☆☆】を【★★★】に評価、フォローをお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る