星空同好会

@koruzirine

第1話 星空同好会は超廃会危機にあり。

 この高校には星空同好会という同好会が存在する。誰が所属し、どんな活動をしているのかは、ほとんど知られていない。ただ、唯一知られているのは廃会危機にあるということ。


 この高校のルールに『部員が五人未満の場合、部から同好会に名称を変更しなければならない』というものがある。


 九月までは星空部だったのが、十月から突然星空同好会へと名称が変更された。このことで、廃会危機なのでは、という噂が広まった。その噂は確かに正解だった。


 そんな星空同好会に所属しているのは一年生にも関わらず会長になった俺、赤沢晴樹あかさわはるきだけである。そう、会員は俺一人だけだ。


 九月までは部員は俺を含め六人いた。ただ、俺以外はみんな三年生だったため、九月末で引退した。そのため、部員が五人未満になり、同好会へと名称を変更せざるを得なくなった。この高校で初めて同好会という名前をつけることとなった。


 会員がゼロになれば、廃会となる。そのため、会員一人はまさに超廃会危機である。この危機を回避することができるのは、俺だけである。


しかし、俺は超がつくほどの隠キャだ。ドラマのように勧誘のチラシを配るとか、みんなの前で演説して勧誘するとか、絶対に無理だ、絶対に。


 来年度の新入生の入会を期待したいが、望み薄なのが現状だ。


 毎年、新入生への部活勧誘の時間が設けられている。そこで各部活の部員が活動内容や魅力を伝える。その様子で、多くの新入生が入りたい部活を決める。俺もそうだった。ただ、隠キャの極みである俺には、そこでの勧誘もおそらく無理だろう。


 また、この高校は運動部が強い。そのため、多くの新入生が運動部へ入部する。運動部に入らなかった新入生の半分くらいは、軽音部に流れるだろう。軽音部も強豪だ。そして、運動部と並んでキラキラしている。眩しいぐらいに。そのため、とても人気が高い。


 星空同好会はどうか、と尋ねられれば、なんとも言えない。まあ、簡単に言うと隠キャの集まりみたいなものだ。キラキラとは程遠い。よって、人が寄りつかない。


 星空同好会のモットーは、『星空を眺め、星について知る』だ。


 活動内容はそのままで毎週一回、星空を眺めたり、星について学んだりして、楽しむというものだ。高校の屋上で寝転がり、ただただ星の観察をする。ただ、夏は日が沈むのが遅いので、プラネタリウムを使ったりすることもある。そして、冬休みには田舎に行き、星空を見るというイベントが行われる。


 俺は特段、星についての知識があるわけでも、興味があるわけでもなかったが、星空部に入部した。ただ、なんとなく星空が好き、というだけであった。そんな俺に対しても、この部活はあたたかく、そして優しく受け入れてくれた。


 隠キャの俺にとってクラスは、なんだか居心地が悪かった。あのザワザワした感じが苦手だ。友達もいなかった俺にとって、星空部は大切な居場所だった。


 そんな大切なものが、なくなっては困る。俺が引退した後にも、残っていてほしい。そのためにも、俺が頑張るしかない、と活動場所である、物理講義室で一人意気込んだ。


 そのときであった。顧問である、山川やまかわ先生が扉を開けて入ってきた。

「今日もスタンバイが早いね、赤沢君」

 山川先生は扉を閉めながら、にこやかに言った。


 山川先生は地学教師であり、俺の六組の隣である、一年五組の担任だ。星空同好会の顧問を長年している。白衣とモジャモジャ頭がトレードマークの優しい中年先生だが、不思議オーラがダダ漏れのせいか、あまり生徒人気は高くない。


「今日は、いい知らせがあるんだ」

 山川先生は、ニヤニヤしながら続けた。

「なんとね、五組のみんなに星空同好会に入らないか、という話をしたら、一人入りたいという人がいたんだ。今日はその人が来ているんだ」


 俺は驚いた。ついに、一カ月続いたお一人様が終了である。率直に嬉しかった。


「入っていいよ」

 山川先生の合図で扉が開いた。


 それから、一人の女子生徒が入ってきた。

 肩くらいまで伸ばした髪に、黒縁の眼鏡をしたおとなしそうな人だ。そして、その人は小さな声で言った。


中宮翠なかみやみどりです。よろしくお願いします」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

星空同好会 @koruzirine

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画