第3話 震える列島:権力の黄昏

​1. 迷彩の連鎖

​それは、一地方の「離反」では終わらなかった。


​札幌、名古屋、大阪、そして福岡。主要都市で鎮圧にあたっていた若い自衛隊員たちが、次々と指揮系統を離脱し、民衆と合流した。かつて暴徒を防いでいた「迷彩の壁」は、今や現体制を突き崩す「迷彩の矛」へと変貌を遂げた。


​大阪城前や名古屋テレビ塔下では、市民と肩を組んだ隊員たちが小銃を空に掲げ、勝利の咆哮を上げる。この**「青年自衛官の反乱」**は、SNSを通じて瞬く間に全国へ伝播し、政府の求心力は完全に消失した。


​2. 永田町占拠

​首都・東京。反乱軍へと転じた部隊は、戦車と装甲車を先頭に永田町へと進撃を開始した。


​民主主義の象徴である国会議事堂は、皮肉にも自衛隊の手によって包囲された。正面玄関には土嚢が積まれ、有刺鉄線が張り巡らされる。かつての護衛対象であった議事堂を、彼らは「解放」という名のもとに占拠したのである。


​続いて、首相官邸も陥落した。重厚な門扉は装甲車によって押し開かれ、反乱部隊の軍靴の音が官邸の廊下に鳴り響いた。 


​3. 最後の演説と失踪

​官邸内の会見場。逃げ場を失った内閣総理大臣・栗山 正夫(くりやま まさお)は、最後となる記者会見に臨んだ。


​演説台の背後には、皮肉にも反乱部隊の兵士二人が直立不動で立っている。それは護衛ではなく、もはや「監視者」であった。


​「国民諸君。私は……この国の秩序を守ろうとした。だが、その秩序そのものが、諸君らの望むものではなかったようだ」 


​憔悴しきった表情で「国民への最後のメッセージ」を読み上げた直後、中継カメラのライトが消された。その数分後、首相は反乱軍によって身柄を拘束され、黒塗りの車両でいずこかへと連れ去られた。その後、彼の姿を見た者は一人もいない。


​4. 凍り付く世界:国際社会の反応

​日本の激震に対し、主要国は一斉に反応を示した。


​アメリカ合衆国:

ホワイトハウスで緊急演説を行った大統領 ロバート・ハリソンは、同盟国の混乱に「深い憂慮」を表明した。しかし、同時に「日本の内政問題であり、国民が自ら解決すべき事態である」と述べ、軍事的な積極介入を否定した。 


​中国:

外交部の報道官 永 平靖(ヤオ・ピンジェン)は、北京での定例会見で「日本の事態は遺憾であるが、我が国は一切関与していない」と断言。内政不干渉の原則を強調し、火の粉が及ぶことを警戒する姿勢を見せた。


​ロシア:

モスクワの報道官 ニコライ・プガチエンコも声明を発表。「我が国の関与は皆無である。事態の速やかな沈静化と、極東地域の安定を望む」と述べ、静観を決め込む構えを見せた。

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