第4話 魔法がダメなら筋肉で!
「……ふんっ! ぬんっ!!」
午前中の授業『初等魔力操作』。
生徒たちは、己の守護刀を依代(よりしろ)にして、大気中の魔力を集め、刀身に纏わせる練習を行っていた。
「わあ、光った! 綺麗……」
アリアが『光の聖剣』を抜くと、それだけで教室中が神々しい黄金の輝きに満たされる。一方で、カイの机の上には、剣の代わりに「鉄製のハンドグリップ」が置かれていた。
「おいカイ、何やってるんだ。魔力を練れと言っただろう」
教官のセレーネが呆れたようにカイの横に立つ。
「いや、練ってるつもりなんですけど……」
カイが顔を真っ赤にして踏ん張ると、彼の手元のハンドグリップが魔力を流される前に物理的な握力でひしゃげた。 メキメキと音を立てて鉄が飴細工のように曲がっていく。
「違う! 筋力で潰せと言っているのではない!」
「でも教官、俺には依代にする刀がねえから、直接この拳に……」
「無茶だ! 人体で直接魔力を練れば、暴走して――」
ドォォォォォン!!
セレーネの警告より早く、カイの右拳から黒い煙が上がった。練りすぎた魔力が、肉体の熱量とぶつかり合って爆発したのだ。
「痛っ……! あちちち!!」
「カイ君大丈夫!?」
アリアが慌てて駆け寄り、カイの腕を抱きかかえる。その際、彼女の豊かな胸がカイの腕にむにゅっと押し付けられた。
「あ、アリア、近い……!」
「そんなこと言ってる場合じゃないよ! ほら、冷やさないと……!」
アリアが魔法で出した水でカイの腕を冷やす。その様子を、隣の席で見ていたリンカが「フン」と鼻で笑った。
「無刀の者に魔力操作など不可能。お前のようなタイプは、基礎体力練成だけやっていればいいのだ」
午後の実戦訓練に備え、カイは指定された更衣室へと向かった。
だが、学院の複雑な構造と、午前中の爆発で少しぼーっとしていたせいか、彼は「男子」と書かれた札を見落とし、隣の扉を開けてしまう。
「あー、暑い。制服は肩が凝るな……」
カイがシャツのボタンを外し、バキバキと背筋を鳴らしながら中に入ると、そこには――。
「……え?」
「…………きゃあ」
そこは女子更衣室だった。しかも、リンカがちょうど戦闘衣に着替えようとしている真っ最中。
スリットの深いチャイナドレス風の衣装が肩からずり落ち、鍛え抜かれた白い背中と、ウエストのくびれ、そして際どい下着のラインがカイの眼前に晒されていた。
「あ、いや……これは……その」
カイの視線は、リンカの驚くほど長く、滑らかな脚に釘付けになる。
「な……な……」
リンカの顔が瞬時に沸騰した。
「何を、見ているのだぁぁぁぁ!!」
「ごぶぉっ!?」
リンカの黄金の脚が唸りを上げ、カイの顎を直撃。カイは更衣室の壁を突き破って外へと吹き飛ばされた。
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「いいか、今日の訓練は対人戦だ。守護刀の特性を理解し、相手の隙を突け」
更衣室の騒動(と、カイの頬の巨大な腫れ)も冷めやらぬまま、訓練場での実戦授業が始まった。
カイの対戦相手に選ばれたのは、ゼオンの取り巻きの中でも血気盛んな大剣使いの少年だった。
「おい、無能。魔力も使えないお前が、どうやって俺の『爆裂剣』を防ぐつもりだ?」
少年がBランクの守護刀を構える。刀身が赤く熱を帯び、周囲の空気が陽炎のように揺れる。
「……刀も魔法もねえ。だから俺は、それを持ってる奴に負けないように、自分を鍛えたんだ」
カイは上着を脱ぎ捨て、半裸の戦闘態勢に入る。
西日に照らされたカイの肉体。爆発的なパワーを秘めた大胸筋と、一突きで岩を穿つ前腕。それは、どんな名工が打った剣よりも凶暴な「武器」の威圧感を放っていた。
「くらえ! 爆裂斬!!」
少年が炎を纏った大剣を振り下ろす。
「カイ君、避けて!」
観戦していたアリアが悲鳴を上げる。
だが、カイは一歩も引かなかった。
「――『鉄身(てっしん)・鋼の型』!!」
ガキィィィィィィン!!!
金属と金属がぶつかり合うような、鋭い音が響き渡った。
信じられないことに、カイは振り下ろされた大剣を、自らの左前腕の筋肉だけで受け止めていたのだ。
「なっ……!? 剣が、食い込まない……!?」
少年の顔が恐怖に引きつる。カイの筋肉が鋼鉄以上の硬度に収縮し、炎を撒き散らす魔剣を完全に止めている。
「……お前の剣、軽いな。気合入ってんのか?」
カイが不敵に笑う。
「肉は鉄! 骨は芯(しん)! ――『重圧(じゅうあつ)・崩掌(ほうしょう)』!!」
カイの右掌が、少年の胸元に吸い込まれるように放たれた。
ドォォォォン!!
爆発的な衝撃波が走り、少年は大剣を握ったまま後方の壁まで一直線に吹き飛ばされ、そのまま気絶した。
静まり返る訓練場。
セレーネは手元の記録板に目を落とし、震える指で書き込んだ。
「……魔法を『物理』で無効化したというのか。この少年……やはり、既存の理論では測れん」
「やったね、カイ君!」
アリアが駆け寄り、カイに抱きつく。勝利の熱気と、アリアの柔らかい質感。
そんな二人を、リンカが頬を赤らめ、複雑な表情で見つめていた。
「……あの鈍重な筋肉。少しは、見直してやらんこともないが……ヘンタイであることに変わりはないからな!」
学院生活の第一歩。カイの「筋肉無双」は、早くも全校生徒の度肝を抜くことになった。
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