第19話

その瞬間、時間がスローモーションのように動いた…


ムーランが祖父母の元へ駆け込もうとして、まだ自分を守る余裕がなかったそのとき、手練れの討手の剣が、彼女の顔に振り下ろされようとしていた…


ジャン・プーウィンの体が瞬間的に飛び出した… 彼女を助けるために跳んだのだ。だが、さらに速い者がいた!


「ギャアアッ!」


低く、力強い、驚くほどの唸り声が響く… 人間の声ではなかった。むしろ、獰猛な獣の咆哮のようだった!


同時に、ジャン・ハイバンの体はまるで幻のように霞んだ! 彼は「幻影移動の術」を使い、討手の刃の前に瞬間移動してムーランの前に立ちはだかった。


カラン!


金属がぶつかる鋭い音が響く。


ジャン・ハイバンの手は、討手の剣を素手でしっかりと掴んでいた。


討手は力いっぱい引っ張ろうとするが、剣はびくともしない。まるで鉄のようにしっかりと挟み込まれているかのようだった。


「何をしている!」、「剣を放せ!」、「これは作業用道具じゃないだろう!」


周りの討手たちは騒ぎ始め、残った者も慌てて討手の剣を引き戻そうとしたが、ジャン・ハイバンとムーランを取り囲むように集まった。


「落ち着け!」ジャン・プーウィンは中央に進み出て、冷静かつ威厳ある態度で言った。「この子はただ守られているだけだ。我々の敵ではない。」


討手たちは、国の大将軍であるジャン・プーウィン本人の威光を目の当たりにし、威嚇心が薄れた。しかし、ひとりだけは違った。


「将軍!」 ある追跡者が叫ぶ。「これは我々の事件じゃありません! この二人は強盗の容疑者です! 調査のため連行する必要があります!」


「正しい!」 別の者が続ける。「盗まれた貴重品の隠し場所を知っているかもしれません。今日中に連行し、将軍に差し出す必要があります!」


ムーランは涙をこぼしながら首を横に振る。「違います!祖父母の持ち物を盗むなんて絶対にありません!家にはそんなものは何もありません!」


その瞬間、ムーランの頭にひとつの考えが浮かんだ――『盗まれた貴重品…もしかして…あの指輪では!?』


その考えで、ムーランの顔は青ざめた。もし本当にあの指輪だったら… そして彼女が真実を話したら… すべてが明らかになってしまう! 祖父母は危険にさらされる!


ジャン・ハイバンはその場でムーランの心の声を感じ取った――

『私は真実を話してしまうかもしれない… でも、話したら、まるで私が盗んだかのように見えてしまう!』


ムーランが口を開こうとしたその瞬間、ジャン・ハイバンは叫んだ。「やめろ!」


その声で皆が一斉に振り向いた。


「この件は… 本当に正義を守るためか?」 ジャン・ハイバンの声は冷たく、目は鋭く討手たちを射抜いた。


ムーランがまだ泣いているのを見て、ジャン・ハイバンは優しく言った。「ムーラン… 私と一緒に祖父母の元へ行く。君も来なさい。誰も君を傷つけはしない。」


討手たちの中で、行動を起こそうとした者がいたが、ジャン・ハイバンの威厳に押され、言葉を飲み込むしかなかった。


「わかった… では、馬車を準備せよ」ジャン・ハイバンは近くの部下に命じた。


ムーランは頑なに地面に座り込む。「行きません!私は祖父母と一緒にいます!」


ジャン・ハイバンは少しため息をつき、心を決めた。『必要なことをしなければ』


そして、心の声をムーランに届けた――

『もし君が馬車に乗らなければ、祖父母を助ける方法はない。』


ムーランははっと我に返り、ジャン・ハイバンの真剣な目を見て、素直に馬車に駆け上がった。


祖父母は小さな背中を見送り、目に涙を浮かべた。胸の中は不安と恐怖でいっぱいだった。


馬車の中は静まり返り、緊張感だけが満ちていた。ムーランは小さく体を丸め、心の中は祖父母への心配でいっぱいだった。


ジャン・ハイバンは冷静な表情で座り、心の中で全てを分析していた。


「ムーラン」彼は穏やかに言った。「今考えている指輪… その詳細をすべて父上に話しなさい。」


ムーランは小さく息を呑み、ジャン・ハイバンを見つめた。


「指輪…?」 ジャン・プーウィンが問いかける。


「まだ確かではありません… でも、これがすべての原因かもしれません」 ムーランは震える声で語り始めた。


「前日に… 薪置き場で黒い布に包まれたものを見つけました。その中に美しい箱があって… 私は中身を知らずに開けてしまいました…」


ジャン・ハイバンは真剣に耳を傾ける。


「その中には一つの金の指輪がありました。とても美しくて… つい指にはめてみたら、小さな針が出て、血が流れました… でも血は指輪に吸い込まれて消えました…」


ムーランは言葉を止め、息を整えた。「そして… 頭の中に声が聞こえたのです…」


「声?」 ジャン・プーウィンが繰り返す。「どんな声だ?」


「言っていました…『秘術の祝福:血脈の契約を完成させよ…』

『使用対象:まだ契約を結んでいない術者で最初の霊獣の血脈を持つ者のみ』

『特殊効果:最初の霊獣に出会った時、指輪は力を覚醒させ、霊獣の血脈を“先祖レベル”まで高める』

『最終任務:血脈の先祖レベルを持つ霊獣と契約せよ』」


話を終えたムーランの車内は、再び静まり返った。


ジャン・ハイバンは目を見開き、深く息をついた。

「なるほど… これはただの宝物ではない… 先祖レベルの血脈を覚醒させる指輪…」


ムーランはまだ無力な普通の少女なのに、先祖レベルの血脈と繋がる可能性がある。これは信じられない出来事だった。


そして最も重要なこと… 指輪はすでにムーランの手にある。つまり…

盗まれた宝物は、ムーランの元にあるということだ!

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