第11話

あの深い会話のあと、ムーランはほっとし、新しい主人に少しずつ心を開いていくのを感じた。馬車の中の空気は、心地よい静けさで満ちていた… しかし、その静けさも長くは続かなかった。


馬車が土の道を抜け、石畳の道に入ると… 周囲の音は変化し始めた。


ガラガラ… ゴツン… ゴトン… 低く響く音が次第に大きくなり、ムーランは眉をひそめ、疑問を抱かざるを得なかった。彼女はそっと、絹のカーテンで覆われた前方を覗き込む。


そして目にした光景に、思わず息をのんだ。


ここは、城下町の奥の街―― 彼女が今まで耳にしたのは、語り草や、商人が村を通り抜けるときの噂話だけだった場所だ。


人、人、人… まるで止まることのない川のように、人々が押し寄せていた。鮮やかな衣装に身を包んだ商人、豪華な服を着た男女、そして物を求める村人たち。建物は二階建てや三階建ての立派な家々が並び、細部まで美しく整えられていた。


ムーランはこれほど多くの人を、一度に見たことがなかった。小さな手で馬車の窓枠をしっかり握り、顔を窓に近づけ、混沌とした光景をできるだけ目に焼き付けようとした。


そして何よりも、彼女の心を最も躍らせたのは――「霊獣」たちの姿だった。


人々の中に、自然に混ざる霊獣たち。

たとえば、一頭のイノシシのような姿の霊獣が荷物を背負い、足元をゆっくり歩く。

ある女性の周りには、色とりどりの霊蝶が舞い、その姿は宝飾品のように輝く。

さらには、城門を守る衛兵の傍らで、勇ましい犬型の霊獣が立っている。


ここが、本物の霊力を持つ者たちの世界なのだ。


ムーランはすぐに目を主人に向け、驚きと興奮を込めて尋ねた。

「ご主人様! ここには、こんなに多くの霊力を持つ人がいるのですか!?」


ズー・フウインは子どもが遊ぶような無邪気な笑みを浮かべた。


「そうだ。だが、まず知っておかねばならない。お前が見た霊力者のほとんどは、低位の霊力しか持たない者たちだ。彼らの力は、普通の人間に比べれば強いかもしれないが、森の霊獣たちと比べれば小さいものだ。そして数が多いから、統制が必要になる。」


彼は少し間を置き、周囲の騒がしい音に合わせるように続けた。

「そのため、この街の管理者は、彼らを秩序立てて監督しなければならない。」


「監督ですか?」ムーランは尋ねた。


「その通り。低位の霊力者は、自分の霊獣を制御し、他人を傷つけたり、間違った用途に使ったりしてはいけない。違反すれば、刑罰は普通の人間の二倍になる。」


「では、高位の霊力者は…?」


「彼らは特別な待遇を受ける。しかし、それでも秩序の中に置かれ、管理者の命令には従わねばならない。」


ズー・フウインは最後に微笑み、意味深な眼差しを向けた。


ムーランは集中して話を聞いた。これは、師匠から一度も教わったことのない授業だった。

霊力者の世界は、ただ面白くて強いだけではない。責任と義務が伴うのだ。


ムーランは再び外を見た。人々と霊獣が行き交う光景は、彼女の目に一層深い意味を帯びて映った。


やがて馬車は主要道路に到着し、巨大な邸宅の門の前で止まった。門には金色の文字で「趙家」と書かれていた。


ズー・フウインは馬車を降り、ムーランに手を取らせながら歩き出した。


門前の光景に、少女は思わず立ち止まった。

これは単なる邸宅ではない―― 広大な敷地を誇る屋敷で、柱や門には力強い装飾が施され、前庭は清潔に石畳で整えられていた。そして門の前には、整然と迎えの人々が立っていた。


灰色の執事が整った姿で立ち、背後には清楚な青い制服の侍女たちが控えていた。全員が礼儀正しく姿勢を正している。


「お帰りなさいませ、ご主人様」と一礼する侍女。


ズー・フウインは微笑み、ムーランを紹介した。

「執事、この少女はムーランだ。今日から彼女は私のそばで学び、私の友となるだろう。」


執事は丁寧に応じ、侍女たちに指示を出した。

「少女を洗い清め、衣服を整え、準備ができたら奥方のもとへ連れて行くように。」


ムーランは周囲の侍女たちに歓迎され、自然に笑顔を返した。

その瞬間、重苦しかった空気は一気に和らいだ。


ズー・フウインは少女の姿を見つめ、心の中で呟いた。

『この子で間違いはない。』


ムーランは執事と侍女たちに導かれ、奥の館へと歩を進めた。

そこには、すでに彼の妻――高貴で気品ある女性、ホウ・メイが座って待っていた。


ホウ・メイは夫の姿を見るや、立ち上がって迎えた。

「お兄様、お戻りなさい!」


ズー・フウインは優しく微笑み、手を取ってホウ・メイに話しかけた。

「落ち着いて、メイアール。ムーランをまず洗い、衣服を整えさせた後で詳しいことを話そう。」


ホウ・メイはほっと息をつき、わずかな安堵の表情を浮かべた。


ムーランもまた、この瞬間、ここがただの学び舎ではなく、責任と使命を伴う場所であることを肌で感じた。

『私はただ…最善を尽くして、与えられたものを受け取るだけ。』


しかし心の奥底では、すでに重い責任が自分にのしかかっていることも理解していた。


館の中は静寂に包まれ、二人の心にはそれぞれの思いが交錯していた。

ただ一つ確かなのは、希望はまだ微かに輝いている――この少女の手に託されて。

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