第7話

夕日がほぼ地平線に沈むころ、町の空はオレンジと赤の色に染まっていた。ムーランは毎日のようにみすぼらしい格好で家へと歩いていた。服は湿っていて、皿を洗った水の匂いが少し染み付いていた。しかし、小さな顔には、透き通るような笑顔が浮かんでいた。


ムーランの小さな手には、一筋の干し豚肉が握られていた… これは、兄からの慰めのご褒美だった。彼女が「狂った犬」の話を聞き終えた後のことだった。


辛いことがあっても… 生きた戦士が悪者を追いかけるのを見ることができる経験は、彼女にとって人生で最も胸躍る瞬間の一つだった。そして今、ムーランはそれを終えて、祖父母のために栄養のある食事を作りに戻っていた。それだけで、少女は嫌な出来事を忘れられるのだった。


ムーランは明るい声で歌いながら、家への最後の道を進む。しかし、その歌声は突然、喉の奥で消えてしまった。


目の前に広がる光景に、ムーランの心は一瞬で沈んだ。


祖父母の大切にしていた小さな菜園… 今や踏み荒らされ、土と混ざった米の穂や香草が散乱していた。木のフェンスは壊れ、家の扉は開けっ放しになっていた。


「おじいちゃん!おばあちゃん!」


ムーランのかすれた声は震え、手の中の干し豚肉は地面に落ちた。小さな足で家の中へ駆け込み、内部の光景を見てさらに心が張り裂ける思いだった。


家の中はひどく荒れていた。米の粒が散乱し、古い服や食器は壊れ、かつて暖かく安全だった家はまるで嵐に襲われたかのようだった。


祖父母は冷たい床に座り込み、二人とも体を震わせ、目は虚ろだった。涙は流れていなかったが、静けさと目に浮かぶ深い悲しみが、ムーランの胸を鋭く刺した。


「おじいちゃん…おばあちゃん…」ムーランは必死に涙をこらえながら、家の中に駆け込み、二人を抱きしめた。


祖父はゆっくりと手を伸ばし、孫の頭を撫でながら言った。「大丈夫だ、君の愛するおばあちゃんも…僕たちも無事だ」


「でも…どうして家が…」ムーランは声を震わせ、言葉が出なかった。


「私たちは正義の者だ…悪党がここに隠れていると思ったんだ… だから家を探ったんだ」祖父は疲れた声で説明した。「でも怪我はしていない」


ムーランは心の中で全てを理解した。午後に見た、正義の者たちと悪党の姿が頭に浮かぶ… そして心の痛みと衝撃があったが、怒りは一切なかった。


「大丈夫…本当に大丈夫」ムーランは涙を浮かべつつ笑顔で二人を慰めた。「少し家が壊れただけで、誰も怪我していない。今回は運が悪かっただけだよ」


彼女は祖父母を座らせ、薬を飲ませ、壊れた家財を片付け始めた。


次の日の朝、ムーランは疲れた体で目を覚まし、まず祖父母の様子を確認することを優先した。家の掃除と修復を黙々と続けながら、心の奥では昨日の被害を振り返りつつ、気持ちを整理していた。


そんな中、彼女は薪の束の中に布で包まれた物を見つけた。それを開けると、見たこともない美しい木製の箱が現れた。その中には赤いベルベットの布に包まれた銀の指輪があり、指輪には精緻な文様が刻まれていた。


ムーランは指にはめてみた。少し大きすぎて緩かったが、次の瞬間、指先に不思議な感覚が走った。


「これは…?」ムーランが驚くと、指輪の中に赤い液体のようなものが吸い込まれ、消えてしまった。


そして、頭の中に声が響いた。古代の力を秘めた指輪の力… 「血の契約を結ぶ準備をせよ…」


ムーランは目を見開き、全身が凍るような衝撃を受けた。しかし、次の瞬間、冷静さを取り戻し、祖父母の薬を煮るために再び行動を始めた。


その指輪は、まだ使い方を理解していない者にだけ現れる古代の魔力を秘めていた。

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