第七話

「投稿するよ。いい?」

「早くやればいいだろう?」

「こっちにも心構えっていうもんがあるんだよ!」

 書き始めてから2か月。そろそろ夏休みも終わる頃。僕はようやく龍の物語を一区切りのところまで完成させた。文字数にして約17万字。いつもに比べてかなりのハイペースで執筆していた。そして、それを今日コンテストに応募する。後は投稿のボタンを押すだけ。この瞬間が一番緊張する。彼に呆れられながら震える指でそっと投稿のボタンを押した。すぐに投稿完了の文字が浮かぶ。そこでようやく肩の力が抜けた。

 この前の作品は残念ながら二次で落選してしまった。一次が通っただけでもかなりの成果だったと思う。そして今回。今回のものは今までで一番自信がある。そう簡単でないことはわかっているのに期待してしまう自分がいた。

「ようやく終わったか。」

「うん。ありがと。まあ、まだ終わってないけどね。」

「一段落はした。」

「そうだけどさ。結果って気になるじゃん。」

「そうだな。」

「お、ようやく人の気持ちわかってきた?」

「いや、全くわからん。」

「なんだよ、ノリで言ったの?」

「ずっと言っていただろう。」

「まあね。」

 彼なりに人の気持ちを理解しようとしているのだろう。最近そのような受け答えが多くなってきている。こちらとしても興味を持ってもらえているのが嬉しかった。何せ彼の態度から興味を持っているのは自分だけだと思っていたから。

 さて結果は待つしかないとして、次に気にしなければいけないのは学校だ。二学期が始まってしまう。宿題はとっくに終わっているし成績も問題はないのだが、新学期が始まると夏休みと違って時間がかなり無くなってしまう。小説を書いていたい僕としてはかなりの打撃なのである。

それに彼と過ごす時間というのは、文句こそあるもののそれ以上に楽しいものであった。最初にとりあえず仲良くなっておこうと思っていたのが恥ずかしいくらいに。その時間が減ってしまうことに若干の寂しさがあった。「彼と過ごすのが楽しい」というのは、単に珍しいものに対する好奇心と小説のネタに対する探究心だけで成り立っているのではない。友人として純粋に楽しいと感じている。彼がそれをどう思っているかなんて僕にはわかりはしないのだけれど。

「次はどんなものを書くつもりなんだ?」

「どうだろう。なんも考えてない。」

「じゃあ次はもっと現実的なものを書くんだな。」

「えー。あんまり書いてて楽しく感じないんだよ。あと、現実的だったらお前のことネタにできないし。」

 そういうと彼は不思議そうに首を傾げた。

「俺は現実にいるだろう?」

「それはそうだけど、通常お前の存在自体がファンタジーなんだからさ。」

 考えてもみろ。龍がいるなんていう話を伝説やゲーム以外で聞いたことがあるだろうか。そりゃ、僕も家の言い伝えでは聞いたことがあるが、そう最近になって信じる人も少ないだろう。僕は実際に目にしているか存在するとわかっているが、そうでもなければ龍は空想上の生き物のままだったはずだ。

 彼は実在する。でも、現在では話の中でしか存在しない。彼自身は自分が実在していないと思われていることに対してどう思っているのだろう。気になって見てみると彼は口角を上げて微笑んでいた。

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