第八話
「そうか。ネタにされないとなると、やめておいた方がいいな。」
あまりにも意外な言葉につい呆気にとられる。なんだこいつ。今の言葉だと、まるでネタにされることを喜んでいるみたいではないか。あんなに作品に対して文句を言ってきたくせに、よく言ったものだ。
「ネタにされるのはいいんだ。」
いたずら心に聞いてみると彼は一瞬悩むような素振りを見せた。彼がすぐに物を言わないのを珍しく思っているとすぐにこちらを見て、優しく微笑みながら言った。
「悪い気はしないさ。ソラに書いてもらえるほど光栄なこともないだろう。」
放たれた思いがけない言葉に戸惑った後、一瞬で顔が真っ赤になるのがわかった。途端に思いついたとは思えない。まるでお手本のような真っすぐな口説き文句。真正面からそんなこと言われて、嬉しくないはずもない。心が一気に沸き立つような感覚になった。
「えー。僕のこと大好きじゃん。」
冗談交じりに言っていても自然と口角が上がる。いや現実世界で自分を認めてもらえるのがこんなに嬉しいとは。ネット上のコメントだってもちろん嬉しいが、やっぱり友人から直接言ってもらう喜びは一味どころの違いではない。
「もー。じゃあしばらくはネタになってもらうからな!」
「あぁ。是非そうしてくれ。」
言い放つと彼は苦笑気味にそう答えた。なんだか彼の物言いは以前と比べてだいぶ柔らかくなっているように感じる。心を許してもれえているのだろう。どうにも遠慮という言葉は知らないようだが。
彼は何かを確かめるようにこちらを見ていた。なんだろうかと思い見返すと、彼は呆れたようにため息をつき、そっぽを向いた。
「そもそも、ソラに好意を持っているのは前に伝えたはずだが。」
「あれ?言われてたっけ?」
「確かに言った。」
そうだったか?だとしたらいつなのだろう?全く見当がつかない。まぁ好意を持ってもらっているに越したことはない。彼は少し拗ねているようだが。
「ごめん。もう一回言ってよ。」
「またの機会にな。」
「えー。」
でも、つまりはもう一度いつかは言ってくれるということだ。なおさら夏休みが終わってしまうのが名残惜しくなってくる。学校が始まってしまうことに頭を抱えていると彼に学校を水没させようかと言われた。彼ならやりかねないのでそれは丁重に断っておいた。
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