第六話

「…そうじゃないんだよ!」

「合ってはいるだろう?」

「そーだけど!人間はね!ロマンスを求めるの!」

「ろまんす?」

「そう!現実には起こらないようなあのキュンキュンする感覚を求めるの!現実で簡単に体験出来たら多くの人は恋愛小説なんて読まないよ!」

「だがこんな回りくどいことをする必要はないだろう?」

「お前はねド直球な方が好きなのかもしれないけど、僕は遠回りの方が好きなの!あのじわじわ実感していく感じ!あれが好きなんだよ!愛されてるなってだんだん実感してくあの感じが!」

「…そう、なのか?」

 たぶんこれは彼が言っていた心は読めるけど理解できないことなのだろう。正直なところ、人間である僕でも人間の恋愛心理なんてわかったものじゃない。だが、感覚的にはわかる。どうも彼はそうではないようだ。無論、彼に感想を求めるのは間違っていることはわかっている。あまりに考え方が違い過ぎる。それでも彼に読んでもらいたいと思うのは、小説を読ませることができる唯一の友人だからだろう。

 何やら首を傾げている彼の横でノートパソコンを閉じた。もういい時間だ。どうにも考えていると時間が過ぎるのが速い。幸いなことに期限までには充分に時間がある。元ネタがある分いいペースで進んでいて、この調子なら余裕をもって書き終えることができそうだ。

 帰ると言ったら彼はいつも通り家の近くまで送ってくれた。なぜか家の前までは来てくれない。夜の間、彼が何をしているのか聞いたことがあった。彼は自分の家に帰っていると言った。家があることに驚いたが、次にどんな家なのか気になって家に行ってみたいと言った。その時はまだ早いと速攻で拒否された。それから何回か試してみるが毎回断られている。無理強いする気はないし、まだ早いと言われたので何時かは連れて行ってくれるのだろう。

「ただいま。」

 そう言って玄関のドアを開けると、そこにはちょうど出かける様子のおばあちゃんがいた。運が悪いな。そう思っていたが、おばあちゃんは嬉しそうな顔をしていた。

「おかえり、そら。またお友達と遊びに行っていたのかい?」

「うん。おばあちゃんはずっと家?」

「行くところもないからね。家にお友達を連れてきてもいいんだよ?」

「機会があったらね。」

「いつもそれを言っておいて、結局一度も来たことがないじゃないか。少しくらい友達の顔を見せておくれよ。」

「あはは…。」

 だってその友達が龍だ、なんて言えるはずがないじゃないか。特に、おばあちゃんは僕に龍には気を付けろと言ってきた張本人なわけで。

 どうしようかと思っていると、リビングの扉が開いてお母さんが顔を出した。助かった。僕はそう思ったが、それを見たおばあちゃんはとても嫌そうな顔をした。

「あら、帰ってきてたのね。おかえりなさい。」

「うん。ただいま。」

「…じゃあ私はご飯を食べてくる。」

「はーい。行ってらっしゃい。」

「気を付けて行ってきてくださいね」

 お母さんの言葉に何も反応せずおばあちゃんは外へ行ってしまった。お母さんが嫌いなのはわかっているので仕方がないとは思うが少しだけ気分は悪い。お母さんの方を見ると、もうすっかり慣れたのか嫌な顔を見せずお見送りしていた。

「さてと、ご飯作りますか!」

「手伝うよ。何すればいい?」

「じゃあ、ニラとキャベツ切ってもらえる?」

「餃子?」

「そう、タネ作ったら一緒に包もうか。」

「はーい。」

 そう返事を返し、手を洗ってから台所へ向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る