傷は消えないけれど
今日の夢宮めぐりは、一人の女性を静かに尾行していました。彼女は背後を気にする様子もなく、どこか軽い足取りで歩いています。
最近恋人の様子がおかしい。だから調べてくれないか。
それが、女性の彼氏だという男から受けた今回の依頼でした。
今のところ女性に不審な動きはありません。それどころかとっても幸せそうな雰囲気が、後ろ姿からでも伝わってきます。
それから少しして、銅像の前までやってきた時に女性は足を止めました。どうやらここで人を待つようです。
友達か、家族だろうか。
そう思いながらめぐりが様子を伺っていると、そこに一人の男性がやって来ました。そして次の瞬間、女性が相手に駆け寄り抱き着いたのです。
めぐりは思わず目を見開きました。
傍から見れば仲睦まじい恋人のように見える一組の男女。しかし、女性の恋人から依頼されているめぐりには全く別の関係性に見えました。
これはもっと詳しく調べなければいけない。女性のことも、そして相手の男性のことも。
そう思っためぐりは、この日から約一週間、二人の動向を観察し続けました。
ある日は二人でショッピングを楽しみ、別の日にはレストランで楽しげに食事をし、また別の日にはアパートの一室に二人で入ったまま、翌日まで出てこないこともありました。近所の人に話を聞けば、その部屋に住んでいるのは相手側の男性で、時々女性のことを招いているとのことでした。
「なんでも彼女さん、元彼と別れてから家に帰るのが怖いんだってさ」
「そうですか……ありがとうございます」
話を聞き終えためぐりは一つ、大切な情報を手に入れたと思いました。
その翌日のこと、依頼者の男が慌てた様子で再度事務所にやってきました。
「昨日彼女が帰ってこなかったんだ。何か知りませんか?」
それを聞いためぐりは、冷ややかな声で言いました。
「あんた、この恋はもう戻らん。前に進みぃや」
「えっ……?」
男は唇を震わせながら、めぐりに尋ねます。
「何を、仰っているんですか?そんな、まるで僕と彼女の関係がもう終わっているみたいに」
「実際終わっとるんやろ?彼女はん、もう新しい相手おるで」
「……やっぱり、そうか。ちなみに彼女は今どこに?」
「教えるわけないやん。依頼とは無関係やし」
「お願いします。お金なら追加で――」
「そういう問題やあらへん。うちはな、あんたに余計な罪を犯してほしくないんよ」
それを聞いた男は膝から崩れ落ち、その場で泣き出してしまいました。
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