【大人向け童話】夢宮めぐりの、ほどけない話
チェンカ☆1159
迷い猫と、帰る道
今日の夢宮めぐりは、人通りの少ない道を歩いていました。その手には一枚の写真があります。
「うーむ、それっぽい子は見当たらんなぁ」
写真には白と茶色の縞模様の猫が、一匹写っていました。依頼者である飼い主さんから借りたものです。
飼い猫がいなくなったから、探してきてほしい。
それが今回の依頼です。
「かさねからの連絡もないなぁ」
もし自分が見つけるより先に猫が帰ってきたら、事務所に電話するようにと、依頼者には伝えてあります。そして事務所の留守番担当である妹のかさねにも、依頼者から電話が来た際は自分に連絡するように、とお願いしてありました。
姿を消してしまった、一匹の飼い猫。
めぐりはふと、足を止めました。前方から猫の鳴き声が、いくつも聞こえてきたのです。加えて、この道の少し先には空き地がありました。
「集会でも開いとるのか……?」
猫が集まっているのなら、何か探すための手がかりがあるかもしれない。
そう考えためぐりは、少し早足で空き地へと向かいました。
空き地には、大小さまざまな猫が十匹程集まっていました。しかしめぐりの姿を目にした猫達は一斉に逃げ出してしまいました。ただ一匹を除いては。
「あんたやな、人が来ても逃げんし間違いないわ」
写真と見比べながら、めぐりは確信しました。
「それにしてもあんた、随分と遠くに来たもんやな」
この空き地は飼い主から聞いていた活動範囲よりも、ずっと外側にありました。
「ほな、飼い主はんの元へ行こか」
ところが、めぐりが抱き上げようとすると猫は威嚇してそれを強く拒みました。人に慣れているとはいえ、知らない相手に心を許すほどではないようです。
そこでめぐりは優しく言いました。
「帰りとうないならべつにええ。けどもし、また飼い主はんに会いたいのなら……うちについて来てくれへん?」
それを聞いた猫は威嚇をやめ、ゆっくりとめぐりの方へ一歩近づきました。めぐりは立ち上がり、猫を見下ろして言います。
「それじゃあうちの後、しっかり着いてくるんやで。よそ見や寄り道したらもう知らんからな」
めぐりは歩き出しました。その後ろを猫は静かに着いてきました。
そして事務所へ到着しました。扉を開けるとかさねが出迎えてくれます。
「おかえりなさい、めぐり姉様。あら、猫さんいらっしゃい」
「かさね、うち依頼者はんに連絡するから、この子見ててくれへん?」
「はーい」
こうして猫とその飼い主は、無事に再会することができました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます