第6話 一行の重さ
ペンを置こうとして、
結局、置けなかった。
書く理由はなかった。
書かない理由なら、いくらでもあった。
もう若くない。
今さらだ。
完成させる場所も、聞いてくれる誰かもいない。
全部、正しい。
それでも、
紙の上の空白が、
やけにうるさかった。
——青は、まだ
そこで止まっている一行が、
未完成というより、
保留された感情みたいに見えた。
ペン先を、紙に戻す。
力は入れていない。
綺麗に書こうともしていない。
——青は、まだ
名前を失っていない
一行。
それだけ。
書き終えた瞬間、
胸の奥が、すっと静かになった。
高揚もしない。
涙も出ない。
世界が変わる感じもしない。
ただ、
書いてしまったな、
と思った。
紙を折る。
今度は、
捨てるためじゃない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます