第11話 不信

「その首輪には毒針が仕込まれている。これからお前の行動は24時間我々の監視下に置かれ、少しでも不審な動きを見せれば毒針が容赦なくお前の意識と未来を奪う」


「……はい」


「反抗も隠し事も許されない。お前は常に我々の命令に従い、自分が人類にとって安全で有益な存在であることを証明し続けろ」


「わかりました」


 威圧的な態度を見せていた男性は、斗悟の反応に眉根を寄せる。


 年齢は30歳前後だろうか。神田源龍かんだげんりゅうと名乗ったその男は、精悍で整った顔立ちだが異様なほどに目つきが鋭く、相対しているだけで恐ろしい迫力だ。


 昔ドラマで見た警察の取調室のように閉鎖的な部屋で、斗悟は大袈裟なほど頑丈な金属製の椅子に全身を拘束され、神田から尋問を受けていた。


「100年前の法律やら条約やらを少し調べた。随分権利意識の高い時代だったようだが……から来たという割にはやけに従順じゃないか。理不尽だと思わないのか?」


「それは、思ってますけど……。でも、仕方ないことなのもわかってます。客観的に見て、オレが怪しすぎるのは自覚してますし。それに――」


 斗悟は、訝る神田の目を真正面から見て言った。


「オレはあなた達の、人間の味方です。信じて欲しいんですけど、オレ自身それを証明できないから、どうしようか困ってました。……だから、首輪これがそのための機会になるなら、むしろありがたいくらいです」


「まるで聖人君子の言い草だな」


 神田は斗悟の答えを聞いて鼻で笑った。


「そこまでして人類のために戦いたい動機は何だ? 見返りに何を求めている?」


「見返り……」

 そんなもの意識していなかった。だがそう返しても神田は納得しないだろう。


「オレは……過去をほとんど失いました」


 答えるまでに、少し考えをまとめる時間が必要だった。


「家族も友達も……、好きだった人も、100年前に置き去りのまま、なぜか自分だけが今ここで生きている。オレに残されたのは、もうこの力だけなんです。過去に戻れないのなら、オレが生きる意味は戦うことしかない。だからそれ自体が見返りというか……この力で誰かの役に立てるなら、それで十分なんです」


「……成程。よくわかった。


「な……――」


 すぐに信じてもらえるとは思っていなかった。だが神田の拒絶は予想よりも強く、斗悟は思わずたじろいでしまう。


「それらしい理屈で取り繕っているが、結局お前は自棄糞やかくそになって死に場所を探しているだけだろう」


「……ち、違う……」


 反射的にこぼれた否定の言葉。だがその先が続かない。


『はーいそこまで。一旦ストップだ、神田くん』


 静寂を破ったのは、室内スピーカーから響いた女性の声だった。


鞠原まりはら。こいつの尋問は俺に任せろと伝えたはずだ」


『わかっていますとも、総司令官殿。だけどさ〜……からのお達しなんだよ。とにかく一度戻って来てくれないか?』


 神田は不愉快そうに舌打ちをし、最後に斗悟を睨みつけて部屋を出ていった。

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崩壊未来のバッドエンド・ブレイカー ~異世界を救った元勇者、少女の信頼を力に変えて滅びの未来を書き換える~ いたむき @dimensional-material

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