第4話 契約という名の選択
瓦礫だらけの高架下に、低い唸り声が反響していた。
「……来る」
**
彼女の視線の先――暗がりの奥で、巨大な影が蠢いた。
【対象:モンスター】
【個体名:ヴァル=グリード】
【脅威ランク:A】
「A……!」
零が小さく舌打ちする。
今まで相手にしてきたBランクとは、明らかに格が違う。
姿を現したのは、四足獣型のモンスターだった。
分厚い外殻、異常に発達した前脚、そして口元から滴る黒い粘液。
「正面からは削れない。私が足止めするから――」
「無理するな」
俺――**
視界に情報が流れ込む。
【弱点:胸部内部】
【再生限界:高】
【推奨対応:複合攻撃】
「……連携しよう」
「言われなくても」
零は即座に引き金を引いた。
銃声と同時に、弾丸が不自然な軌道を描く。
《
モンスターの死角から弾丸が突き刺さり、注意を引きつける。
だが――
「っ!?」
ヴァル=グリードは、信じられない速度で踏み込んだ。
弾丸を無視し、零へ一直線。
「零!」
俺が叫んだ瞬間、
前脚が地面を叩き割り、衝撃波が走る。
零の身体が宙を舞い、壁に叩きつけられた。
「……っ、が……!」
立ち上がろうとするが、脚が動かない。
外骨格の破片が、深く刺さっている。
モンスターが、ゆっくりと近づく。
――間に合わない。
《使え》
頭の奥で、低い声が囁いた。
《お前の力なら、救える》
視界の隅に、警告が浮かぶ。
【魔神侵食率:上昇予測】
【推奨手段:権能拡張】
「……くそ」
零が、必死に銃を構え直す。
「来ないで……! 朔夜、逃げて!」
その声を聞いた瞬間、
俺の中で、何かが決まった。
「……嫌だ」
俺は、零の前に立つ。
モンスターの咆哮が、至近距離で炸裂する。
恐怖は、ない。
あるのは――選択だけだ。
「零」
俺は、振り返らずに言った。
「助かりたいか」
「……当たり前でしょ」
即答だった。
なら。
「――力を、貸せ」
瞬間、世界が歪む。
【権能起動】
【契約系権能:未登録】
【代替処理を開始】
魔神の声が、はっきりと響いた。
《
《我が力を分け与え、命を繋ぐ契約》
「……なに、これ……」
零の身体を、黒紫の光が包む。
傷口が、逆再生するように塞がっていく。
【対象:鷹宮零】
【状態:眷属】
【権能付与:限定耐性・能力補助】
同時に、俺の中に重さが加わった。
繋がった感覚。
命と命が、細い糸で結ばれたような感触。
「っ……!」
零が息を呑み、ゆっくりと立ち上がる。
「……私、生きて……?」
「……ああ」
ヴァル=グリードが動きを止めた。
俺を見るその目に、明確な恐怖が宿っている。
【存在格差:発生】
【対象、行動鈍化】
「今だ、零!」
「……了解!」
零が引き金を引く。
今度の弾丸は、俺が見た弱点へ、正確に吸い込まれた。
俺も、拳を突き出す。
【下位能力無効化:最大】
【再生停止】
コアが砕け、
ヴァル=グリードは、地響きを立てて崩れ落ちた。
静寂。
戦いは、終わった。
俺は、その場に膝をつく。
【警告】
【魔神侵食率:12%】
「……やりすぎ、だな」
零が、俺を見下ろす。
その目に、恐怖はなかった。
あるのは――覚悟。
「……眷属、って言った?」
「ああ」
「つまり、逃げられない?」
「多分」
一瞬の沈黙。
そして、零は苦笑した。
「最悪。でも……」
俺に手を差し伸べる。
「死ぬよりは、マシ」
その手を、俺は取った。
契約は、終わった。
だが同時に、戻れない一線を越えたのも、確かだった。
――俺は、また一つ、人間から遠ざかった。
それでも。
この選択だけは、
後悔していない。
0.01%の魔神権能(オーバーロード)――無能力者が引き当てた、世界最強の一枠 羽蟲蛇 響太郎 @Kyotaro_1123
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