〈第3話〉世界に嫌われし者


 赤黒い竜の瞳がディオスを捉えた瞬間、地面が微かに震えた。

 翼の端が地面をかすめ、灼熱の風がディオスの身体を撫でる。

 それはただの風ではなく、熱を帯びた刃のように肌を切り裂き、潜む昂ぶりを一層煽り立てた。


 ディオスは即座に身体を低くし斜めに跳ねる。

 足元の砂が舞い上がり、熱風で灰が目に入りかけると竜の咆哮が再び轟き、振動は胸骨まで響く。


「……!」


 次の瞬間、竜の口元から赤黒い炎が吹き出す。

 地面に触れると爆発のように砂と灰が吹き飛び、焼けこげたの枝や小石が空中を舞う。

 ディオスは咄嗟に回避動作を取り、背中を土の斜面に押し付けて飛び越えた。

 炎の光は世界を一瞬にして血のように赤く染め上げ、回避後の残像だけが視界に焼き付いる。


「(ぐっ……次はっ…!)」


 振り返ると炎の柱は既に林をなぞるように次々と立ち上がり、逃げ場を徐々に削っていく。

 ディオスは即座に距離を測り、熱を帯びた地面の隙間を選びながら走る。


 その背後で竜の羽が地面を叩き、砂と灰が竜巻のように巻き上がった。

 炎の壁はまるで生きているかのようにうねり、彼の自由を奪う意思を示す。

 ディオスは灼熱の地面の上を、一瞬たりとも思考を休めることなく跳躍する。


「おい、なんで回避ばっかで攻撃に転じない!このまま行ってもジリ貧だぞ!?」


「解禁って言っても、まずは慣れるとこから始めないといけないんだよ!?出力をミスれば、この時点で厄介なものまで引き寄せかねないし…!」


 ディオスの手のひらの内側で微かに赤黒い瘴気が渦巻き、地面から伝わる熱と混ざり合う。

 瘴気は瞬く間に体を包み込み、服の端や髪を揺らし、熱風すら押し返す力になった。

 内側に宿る禁忌の力が、外部の脅威に応じて静かに流れていく過程であり、その存在は周囲の空気の流れすら歪ませていく。


「だから、ここでは術印に『慣れる』ことに集中する!決める時は……『この世界の力』で行くよ…!」


「……!…分かった。ならそのまま行け!」


 竜が再び咆哮し、口から炎を吐き出す。

 ディオスは右に跳ね、火柱が自分の後ろで爆ぜる瞬間、手を突き出して瘴気を解き放つ。

 瘴気は地面を這い、炎の壁に触れた瞬間に炎の赤と黒い瘴気が交じり合い煙が巻き上がる。

 

 禁忌の黒と、竜の炎の赤。

 二つの異質な色が衝突し、世界に混濁した煙を噴き上げた。


「ははっ!いいねいいね……勝手が分かってきた!」


 しかし、正面から竜を見据えるディオスの表情にはすでに余裕が滲んでいた。

 呼吸と連動するように瘴気は形を歪に変え続ける。


「(相変わらず、適応が早いな…)」


 ディオスは笑いながら振り向くと、竜は翼を広げながら空中で旋回し、再び炎を連射を行う。

 地面の砂が熱で膨張し、踏み込むたびに軽く跳ね返る。


 灰混じりの煙が視界をかすめ、ディオスの身体感覚が常に揺さぶられる。

 しかし身体は、熱と煙の中で微細な震えを覚えながらも、まるで水を得た魚のように、力の流れと環境の変化に順応していった。


「(まずは『身体能力の強化』から……術印の基本技能だけど、やっぱり使い勝手が本当にいいねっ!)」


 大地が振動し、竜は影を黒く波打ちながら攻撃を続けるが、ディオスはそれらを全て捌く。

 ディオスはさらに全身に瘴気を流し込み、次の一撃を打つ準備を整えた。

 それでも尚、竜の目には破壊と怒りの光が宿り、炎の匂いと熱風の渦が周囲を支配する。


 そして竜が吐いた炎が地を焦がした直後、流れるようにディオスの前に巨大な影が迫る。

 爪が振り下ろされ、地面が刃物のように裂けた。

 地面を抉った爪の先からは、血のような赤い残光が立ち昇り、ディオスに向けられた破壊の意志を物語っている。


「っぶない…!」


 ディオスは身をひねってかわし、竜の腕を絡まるように登りに一気に距離をほぼゼロにする。

 そして、熱で皮膚が焼けそうになる中で腕に瘴気を纏わせ拳を叩き込んだ。

 その一撃にぐらいついた巨体……だが、硬質な鱗に拳が弾かれて火花が散るだけだった。


「(くぅっ……やっぱりただ正面からじゃ通らないかぁ…!)」


 竜は怒りの咆哮と共に翼を振り、薄く笑みを浮かべていたディオスの身体を遠方まで吹き飛ばす。

 背中から激しく地面に叩きつけられながらもその勢いのまま起き上がり、ディオスは土煙の中で声に出して笑った。


「はははっ!いいねぇっ、悪くない……どんどん順応しているの感覚があるよ!」


 吹き飛ばされた痛みはディオスの体内で、制御可能な力への確信という熱に変換されていく。

 土煙の向こうで笑うその姿は、既に単なる逃走者ではなかった。


「なぁ、その見るからに害がありそうな気色悪い瘴気、何か特有の効果とかあるのか?」


「もちろん…!」


 雨のように降り注ぐ火球を回避しながら、ディオスは無から取り出したのかも分からない短剣を手に取る。

 火球は空中で熱を帯びた雫のように見えたが、ディオスはその軌道を冷静に予測し、視線で追っていた。


「外的要因を消すのはもちろんだけど………結構、弩級の力があるよ…!」


 そして、袖から流れた瘴気を纏わせた。

 短剣の金属光沢が、一瞬にして赤黒い影に飲み込まれる。

 その瘴気は、触れたものを即座に異物へと変質させる、生命の理に反した色を帯びていた。


「例え…ば!」


 そして、それを向かってくる火球に投げつけると、短剣は火球を掻き消しながら竜の片目に突き刺さった。


「……こういう風なこととかね?」


 ディオスがじっと短剣が突き刺さったのを確認しながらそう呟くと、首筋の紋様が一段と黒く輝く。

 それと同時、深々と短剣が突き刺さった竜の目からディオスが纏っている瘴気が溢れ出し、目の周辺を腐らせるように一気に広がった。


 竜の眼窩に広がる黒い浸食は、まるで生命の熱を奪い去る冷たい毒そのもの。

 その破壊の光景は竜の巨体に見合わない、悍ましい静けさを伴っていた。


「うおっ!?」


 目が潰れた瞬間、竜から溢れる炎が乱れて一気に弱々しく消えていく。

 そして唸り声をあげながら竜は空中から勢いよく落下し、地面を大きく揺らした。


「……見ての通り、この瘴気は禁忌の術印使い以外にとっては猛毒みたいなもの。少しでも傷さえつければ、浸食されるように一気に広がるんだ…」


 それを見届けたディオスは、ゆっくりと竜に向かって歩いていく。

 足取りはもはや逃走時の慌ただしさとは無縁で、自らが作り出した惨劇を観察する、観測者のような落ち着きを帯びていた。


 そして、目の前で動かなくなった赤黒い竜を直視し、自身の与えられた力の効果を実感する。


「他にもこの術印が持っている効果はあるけど、今はこれで十分……これで分かったでしょ?」


 ディオスは、目の前で静かに朽ちていく竜の巨体を指し示す代わりに、ただ静かに問いかける。

 その視線は、この力の持つ絶対的な破壊力をメルビリスに確認させるようだった。


「……なんで禁忌の術印がこの世界で『最も嫌悪の対象』になっているかがね?」


 言葉は熱風と灰に混じって、まるで世界そのものの告発のように響き渡った。

 禁忌の力は、その存在自体が世界の法則を汚す『害』であることを改めて示す。


「……ああ。十分すぎるくらいにはな?」


 メルビリスの返答には軽口は無く、代わりに力の持つ禍々しさを認める静かな重みが込められていた。

 ディオスは手のひらに残る赤黒い瘴気が微かに揺れ、指先を伝って熱が逃げるのを感じる。

 竜はまだ荒く息をしているものの、その巨体はもうディオスに向けての攻撃姿勢を取っていない。


「……ははっ!それにしてもこれが禁忌の力かぁ……いやぁ、予想以上だけど…」


 湧き上がる昂ぶりは確かにあったが、その顔には硬い笑みが浮かんでいた。

 周囲には焼け焦げた木の枝や小石、舞い上がった砂煙がまだ漂い、戦闘の痕跡を物語っている。


「やっぱり僕が使うようなことはしたくなかったかなぁ…!ここまでいかにもだと、完っ全な敵役じゃん!?」


 そして、瘴気によって朽ち果てたものも同様に。


 ディオスの硬い笑みは、自らの宿命と、その宿命を肯定せざるを得ない昂ぶりの間で揺れる、複雑な内面を映し出していた。


「それについては同感だな。こんな見るからに気味悪いもの、触れたいとすら誰も思わないだろうな?」


「やっぱりそう思うよねー……だからこそのハズレなんだよ〜…」


 ディオスは仕方ないかと肩をすくめ、口を尖らせながら砂を蹴り上げるようにして後ろを向く。

 足元の砂が柔らかく崩れ、熱風に混じった灰が顔にかかるが、その乾いた笑みは揺らがない。


「……それじゃ、次のステップに行こっか。」


 メルビリスの声に反応して、ディオスはゆっくりと振り返り、竜の巨体を見渡す。

 炎で黒く焦げた地面の裂け目に目をやりつつ、竜がまだ微かに息があるのを確認する。


「…おい、コイツは殺さなくていいのか?」


「はぁ、全く……本当に物騒だねー、君は?」


 竜の巨体は、大地に深く刻まれた戦闘の傷跡の中心に横たわる。

 そしてその息遣いだけが、辛うじてこの破壊が生きている世界で起こった出来事だと教えていた。


「僕は明確な『敵』以外にはあまりそういうことするつもりはないよ。それに十分に『気配をばら撒けた』し、原作通りにこの竜から離れて……」


 一瞬だけディオスが竜から目線を切った時だった。


 背中の瘴気がほのかに熱を帯び、熱風に混じる灰が踵から巻き上がり、視界に影が覆い被さる。

 そして、その影の方向に目を向けようとした時だった。

 ディオスの身体は目で捉えられない攻撃によって、激しく弾かれて高々と砂埃が舞い上がった。


「ーーー」


 攻撃の張本人である竜は、再び起き上がってすぐに距離を取り、攻撃した箇所をふらつきながら警戒している。

 普通の人間なら、原型を留めることができないことが容易に想像できる不意の一撃。

 その威力は深々と抉れた地面、風に煽られて高々と舞い上がる煙を見ると十分把握できた。


「……なんで?」


 ーーだが。


「なんで……こういう時に本来は竜がすぐに逃走するはずじゃんか…!?なんでまだ…」


 砂埃が晴れかけると、そこには何事もなかったかのように人の輪郭が不気味なほど自然に立っていた。

 その砂埃越しからでも、暗いシルエットの首筋付近から黒色の光が漏れ出ているのが分かる。

 しかしその声には、自分の目の前で起こったことが信じられないといった感情が込められていた。


「なにこれ……『不具合』?それとも『罪人』がもう…」


「……色々と言ってられんのか…もうコイツは、ここでやらなきゃいつまでも張り付いてくるぞ。」


「それは分かってるよ!」


 そうして完全に砂埃が晴れ、視界にディオスの輪郭が現れる。

 だが、竜の目にはディオスの浮かぶ顔の端に、どこか計り知れない冷たさが宿っているのが見えた。


「……術印の試運転も済んだし…仕方ないか…」


 その首筋の暗い紋様から漏れる黒色の光が、まるで生き物のように脈打ち、地面の裂け目のように揺らめく。

 そして淡々と話すディオスの視線はたった今、攻撃を加えられた竜の尻尾に向けられている。


「まだ『確認』もしたいし…」


 そして、それが表すもの。


 竜は尻尾を自身の目の前に持ってくると、その先端部分はひび割れた地面のように骨ごと崩れ落ちた。

 そして崩れ落ちた瞬間、思わず後退し、血の匂いを含んだ熱風に目を細める。


「だからさ、ごめんね……そろそろ終わらせよっか。」


 生々しい音と共に、尾の先端が崩れ落ちるのを確認したディオスは、何事もなかったかのように静かにそう呟く。

 そして、砂埃の向こうからじっと竜を見つめていた。

 竜は瞬時に何かを察したように振り絞るように咆哮を上げながら巨大な腕で地面を抉り、凄まじい速度で大小様々な岩石を飛ばす。


「……まだ動くんだ?」


 一瞬にして目の前から逃げ場がなくなったディオスだったが、首元の紋様を光らせるのと同時に迫ってきた岩石が全てが砕かれる。

 しかし、竜の方へ視線を移すと地面に炎を放っておりディオスの周りで巨大な烈風が巻き起こった。


「……んん?」


 巨大な音を立て元いたは場所から砂埃が舞いあがり、熱風に煽られて再び竜の姿が目の前から消えた。

 竜は空へ飛び出す気配を見せずに地面を大きく揺らしながらディオスの周りを徘徊している。

 もうただの脅威として見られていないことを、ディオスは竜のその行動から何となく察せた。


「(もしかして、これって…)…竜にも正義感があるのか、死に物狂いで僕を殺そうとする気だね?」


「そうみたいだな……にしてもコイツ、なんだか妙に賢い。こんな視界を奪うのを優先させるとか、人間みたく何か勘づいた前提の動きをしてくるなんてな?」


「………」


 竜の取っている行動は、側から見れば『使命感』から来ているもののように見える。

 だが、それは単なる本能や怒りではなかった。


 ーーそれはまるで、『祈り』に近いもの。


 咆哮一つで大地が震え、砂塵が舞い上がるたびに、それは世界そのものが警鐘を鳴らしているように響く。

 その翼の一振りは嵐を呼び、爪が地を抉るたびに、大地が「退け」と叫んでいるかのようだった。


「……前に本で読んだんだけどさ?人には本来、五感とは別に『第六感』って呼ばれるものがあるらしい。まぁ、ほとんどの人には欠けてる感覚らしいんだけど…」


 立ち昇る砂煙は太陽の光を濾過し、世界全体が古びたセピア色の写真のように見えた。

 その中で、ディオスとメルビリスの声だけが、時間の流れから切り離されたように鮮明に響く。


「……第六感?なんだそれは?」


 ディオスは未だに立ち昇る砂煙の中を動き続ける竜を見据え、その場から動くことなくポツリとそう呟いた。

 その言葉に疑問の声を向けたメルビリスであったが、ディオスは続けて言葉を返す。


「いわゆる『直感』みたいなもの。見えないもの、聞こえないもの、感じ取れないもの……こういった概念的なものを『感じ取ってしまう』感覚のことだよ。」


「………」


 風は遠い過去の出来事を囁くように荒野を吹き抜ける。

 しかし、二人の周囲だけは不自然なほど静まり返り、砂粒が地面に落ちる音すら空間に飲み込まれていくようだった。


「これは普通の人間には掴めるものじゃない……でも…」


 ディオスは首筋の黒紋を指先で軽く叩ききながら、口元が僅かに引きつった。

 それは笑みなのかどうか、本人すら分からないもの。

 指先に触れる紋様の感触は、熱ではなく長い時を封じ込めた冷たい金属のようだった。


「この竜は違う……まるで『世界そのものの意志』を背負って、僕に襲いかかってきてるみたいじゃない…?」


「つまりお前が言いたいのは…」


 もう目の前にいる竜は、ただの怪物ではない。

 世界の理に抗う『異物』を嗅ぎ取り、その存在を焼き尽くすためのある種の『審判』として現れている。


「そうみたい……残念ながら、もう僕らはただの『物語の登場人物』としての枠組みとして、どうも見られてないみたいだね…」


 そして、その異物とはーー『ディオス自身』。


 竜の瞳に映るディオスの姿は、まるで『ここにいてはならない者』だと告げていた。

 ただ世界から弾かれるべき禁忌の術印使いなどではなく、もっと歪なものを閉じ込めている者。

 その視線は哀れみすら帯びた断罪のまなざしである。


「こんなの初めてだよ……ここまで世界そのものから歓迎されないなんてさ…」


 その時、ディオスは小さく哀しそうに笑った。


 それは恐れでも、勝利の余裕でもない。

 ただ、自分が『世界そのものから嫌われている』ことを確信した者の乾いた笑みだった。

 笑みは乾いた空に、一瞬で消え去る蜃気楼のように虚しさすら感じるもの。


「…世界そのものから、か。それはたしかに特殊すぎるし、今まであんま見たことすらないな?」


「…でしょ?そしてこの竜は、本当に世界の守護者みたいなつもりかな…」


 刹那、黒い紋様が脈打ち、空気そのものが軋む。

 竜の咆哮が大地を震わせても、その光景はただ『異物』と『世界そのもの』が衝突する瞬間を告げていた。

 突風がディオスと竜の間を切り裂くように奔り、熱と冷気が混ざり合って、空間の境界線が歪ませる。


「でも、残念ながら…」


 不意にディオスを包む光と影の境目が、曖昧に揺らめく。

 その笑みは挑発か、あるいは哀れみか。

 どちらとも取れる危ういものだった。


「……今の僕は、そういう役回りを踏み越える存在なんだよね?」


 『世界そのものが自分を拒絶している』。


 その事実を受け取ったディオスが取る行動は、すでに決まっていた。

 

「もうこっからは術印使いの戦い方じゃない……この世界に踏み込んだ『罪狩り』の戦い方で行こっか。」


「……いくのか?」


「うん……『烙印』を使う。」


 ディオスが言葉を口にした瞬間、首筋の黒紋から洩れていた光が消えてなくなり、空気が一変する。

 それは先ほどまでの瘴気とは異質のもの。

 重く、底知れない重力のような波動だった。

 しかしディオスの様子は全く変わらず、得体の知れない何かだけが増幅していく。


「ははっ。これは目には見えないはずだけど、もしかして気配で気づいた?」


 竜すらも一瞬、姿を隠しながらその動きを止める。

 その硬質な鱗が、微かにかつ規則的に軋む音を立てた。

 それは恐怖ではなく、理の崩壊に対する警鐘の音。


「そう……これは術印とは、ちょっと別口のもの。」


 その眼に宿る断罪の意思が揺らいだのは、目の前の存在が『禁忌』を凌ぐ、もっと得体の知れない何かであると感じ取ったからだった。

 目線は灰が登る青い空へと向けられ、空気に溶けるように声だけが淡々と響く。


「……だから見せてあげるよ。今は姿が見えない君も、ここから先は物語の予定にはなかった、新しく加えられる『展開』になるんだからね?」


 空気は軋み、地面がかすかに脈動を始める。


 その前で竜はただ巨大な身体を構えたまま、わずかの間 一切動けなかった。


 まるでその本能が『ここから一歩でも踏み出せば、取り返しのつかないものに触れる』と告げているかのように。

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裏世界の牢獄にて Navi @iNav

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