1/11読了 『ほろよい読書』

〇総評

全体的に良かった。お酒というものに対して、それぞれの作家が向き合ってできたアンソロジーなのだと思う。私は昼に読んだが、夜暗くなってから読むべき短編集である気がする。寝る前に、毎日一遍ずつ。


1.ショコラと秘密は彼女に香る

作・織守きょうや

ただ一言、好きだと思った。優しく柔らかい雰囲気を、かすかなアルコールの香りが包んでいる。登和子さんと、さくらさんと、それを見る私。その狭間で本当の愛を見つけられた気がした。


2.初恋ソーダ

作・坂井希久子

私はあまりこの手の話が好きではない。というより、この手のキャラクターが好きではない。男も、女も、なんというかイラッとする。読んでいてフラストレーションが溜まる。酒の入った男を、夜に家に呼ぶ。相手のことなど結局は何も知らないのに。そこに対して主人公の出す結論と、最後にお酒を飲むところは好きなのだが、序盤のストレスが強かった。これじゃすっきり相殺にはならない。うーむ。作品の善し悪しというよりは、私の好みによってる気もするがあまり良いとは思えなかった。


3.醸造学科の宇一くん

作・額賀澪

盛大なネタバレだ。だが言いたい。恋愛にならない展開の良さがここにある!

男女を出したって、何でも恋愛にすればいいってもんじゃない。男女の友情が成立するかとかそんな話はどうでもいい。だってフィクションだし。

この話はいわゆる青春物だ(いつまでを青春と呼んでいいのかは知らないが)。心の中の言語化したくない悩みに対し、一定の解を与える。その、ある種の思春期からの脱皮が見られる。その脱皮の過程と、そこに関わるお酒の味に対する印象の変化がこの作品の大きな魅力であると感じた。


4.定食屋「雑」

ラグビーの解説を遠くに聞きながら、ページをひとつずつ捲っていく。初めの方は、うーんと思ったが途中からはするすると読み進めてしまった。

キャラクターは嫌いだ。たぶん。亭主のぞうさんは好きだけど、女も男も常連もどこか好きになれない。それでも読むうちに作品に入り込んでいってしまう。食事中に酒を飲みたくない主人公と、その潔癖さを疎ましく思う夫。もう解けてしまった絆が、新たな絆を結んでいく。定食屋「雑」は、この先も誰かの憩いの場であり続けるのだろう。最後、ふと、涙が滲んだ。


5.bar きりんぐみ

作・柚木麻子

少し大人な雰囲気と、人の優しさが混ざった話。私たち読者にも少し苦い記憶と共にあるコロナ禍の、きりんぐみのオンラインミーティングに呼ばれて休業中だし丁度いいとバーテンダーをする主人公。ぷーちん、そう呼ばれていた主人公の、過去の勘違いが解けていく。優しく、温かく、涙が零れていく。この作品が、『ほろよい読書』の最後に読めて良かったと思った。

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読了書架 夏目凪 @natsumenagi

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