Under the “X”ea-Party♪【2】


「「「!?」」」


 三人は、想定外の乱入者に呆気にとられながらも、さっと身を寄せ合いました。


「さっきから、ぺちゃくちゃぺちゃくちゃ……うるさくてかなわねぇ」

 

 最も簡易的な守備陣形から数名抜けた形ではありましたが、普段の訓練が活きているということなのでしょう。


「噴火で国が滅んだんだかなんだか知らねぇが、それなら避難先の国に感謝して、休みなく働くのが筋ってもんじゃねぇのかよ。あぁ?」


 野太い声に大きな図体をした人魚は、受け入れ先の国の民のようです。


(ここはあたしに任せてちょうだい)


 薄橙に縞模様をした人魚は他の二人に唇の動きでそう伝え、ひと掻き前へと進み出ました。


「もちろん、この国の皆様にはとても感謝しております。いかに国土広しといえど、施設や食料の問題もございますし、皆様に多大なるご迷惑とご負担をお掛けしてしまっている事でしょう。大変申し訳なく感じております……」


 一瞬にしてオフモードから仕事モードに切り替えた彼女は、闇に映える縞模様を翻し、横柄な乱入者が口を挟む間も与えずに畳み掛けます。

 

「しかし、それを上回る感謝の念を感じているのもまた、事実でございます。……反対意見も多かった事でしょう。それでも、私ども全員を受け入れてくださり、本当にありがとうございます」

 

「お、おう……」


 お茶会に乱入した中年の人魚は、すっかり彼女のペースに呑まれてしまった様子で、三人の間に割って入ってきたときのような迫力は微塵も感じられませんでした。

 

「少しでも御恩を返すため、この一ヶ月間はほとんど休みも取らずに奉公してまいりました。ここにいる三名のみならず、国民の大多数がそうであったという事は、この国の皆様も御存知なのではないでしょうか?」


 しかし、彼女がそう語りかけると――――。

 

「はっ! どうだかな。いまもてめぇらは楽しそうにくっちゃべってたじゃねぇかよ」


 中年の人魚は普段の調子を取り戻したのか、でっぷりとした腹を揺らし、いちゃもんをつけ始めます。


「てめぇは『国民の大多数』とかぬかしたが、例の噴火で立派な王族サマが一人犠牲になってるって話してだったよなぁ? ちっとも悲しくねぇってのか? えっ? さすが何年も東西でいがみ合ってる王国民とやらは冷てぇなぁ!! 周りの海水が凍っちまってねぇのが不思議なくらいだ!」


 黄緑色の鱗を持った一人の王族のことが話題にのぼると、三人の顔は深い悲しみに沈みました。

 

「…………そうかもしれません」


「「「!?」」」


 彼女のひと言に、後ろの二人だけでなく、中年の人魚まで目を見張りました。


「いまおっしゃられましたように、私たちは故郷に悲しみまで置いてきてしまったのかもしれません。その方とは私的な交流もございましたが……。あの災害の事を考えずにいようと思うあまりに、大切だったはずのお方の事さえ記憶から抹消しかけていたのでしょう。思い出させてくださり、感謝の念に堪えません」


 そのあとに続く言葉にも二人と一人は驚くばかりで、彼女の独擅場で終わるかに思えましたが、その人魚は図体に見合った神経の持ち主だったらしく、再び肩を怒らせました。

 

「……そ、そうだ! わかりゃいいんだ! 悲しいなら、悲しい顔をしてやがれ!」


 慌てて立ち去った(つもりなのでしょうが、身体が重いのか、あまり泳ぎは速くありませんでした。)中年の人魚の後ろ姿が遠ざかるのを眺める三人は、段階的に警戒態勢を解き、お茶会開始時と同じく小さな円を作りました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る