Three of Teacups
片喰 一歌
Under the “X”ea-Party♪【1】
海底のある王国が滅んだ一ヶ月ほどあと――――。
一名の犠牲者を出したその騒動が、彼の周囲の人魚以外の記憶から風化するのに十分な時間がたった頃……とも言い換えられるでしょうか。
避難先では、王宮仕えの三人の人魚が、あの日の約束どおりにお茶会を開いていました。
「最近、衛兵のカレが気になってるんだよねぇ」
と言い出したのは、鰭にいくつもの六角形が浮かんだ人魚でした。
半分夢のなかにいるような喋りと表情をした彼女は、片想いの達人です。
「衛兵? いっぱいいるじゃないの。どの人魚の事?」
薄い橙に闇に映える縞模様をした人魚が、優雅な口調で突っ込みます。
「……正午から城門の警備してる……」
「衛兵さんって、どの時間でも二人いるよね~?」
黒地に水色の水玉模様を持つ人魚が指摘しました。
彼女は環境の変化にあまり強くはなく、やっとこの地域の水質に慣れてきたところです。
「…………黒い鰭……が、かっこいいほう……」
「あ~、あの人か! 『かっこいい』は主観だと思うけど、真面目でいい人だよね!」
「えぇ、そうかなぁ。かっこいいと思うんだけどなぁ」
「貴女がかっこいいと思うなら、かっこいいのよ。それにしても、貴女が好きになる人魚って毎回全然違うタイプで法則性がないわよね」
「自分でも思うんだよねぇ。恋に恋してるだけかなぁ……」
「ああ、そういう意味で言ったわけじゃないのよ。『その時々で目の前の相手に向き合っている感じがして素敵』って言いたかったの。ごめんなさいね」
「「……か、かっこいい……!!」」
「別に普通よ」
「ううん、そんな事ないよ! みんな、見る目ないよね~。こんなイイ人魚、もっと爆モテしててもおかしくないのに」
「十分モテモテだけどねぇ。深海の金(※)だと思われてるんじゃないかなぁ」
(※『深海の金』……陸で言う『高嶺の花』に相当する諺です。)
「それはあるかも~! 取り柄ないうちとも仲良くしてくれてありがとうね~!!」
「深海の金だなんて大袈裟ね。あたしは貴女たちの仕事ぶりも人魚柄も大好きなだけよ」
「えへへ、嬉しいなぁ。……あ。そういえば、最近、ダンナさんとはどう? 仲良くしてる?」
「あ、それ聞いちゃう~? もちろんラブラブだよ~! ……って言いたいとこだけど、こういうの自分で言うのってどうなんだろうね?」
「鰭も模様もツヤツヤだもの。きっと本当にラブラブなのね。羨ましいわ」
「こないだ、『そろそろ子供作る時期だね~』なんて話になって、『もうちょっと二人でいたい気もするけど、一緒に子育てするのも楽しみだね』って言ってくれてさ」
「「いい夫婦……!」」
「あはは。うちはいい奥さんできてる自信ないけど、ほんといい夫だよ。人魚としても尊敬してる!」
「うんうん。いいねぇ。心あたたまる話が聞けたところで……キミはどうなの? この前、みんなで集まったときは彼女と別れてすぐだったけど、一ヶ月くらい前まではすらっとした人魚とよく一緒にいたよね?」
「そうそう! 一番聞きたかったのそれなんだよ〜。すごく楽しそうだったし、お似合いだな〜って思ってたの! あのひと、こっちに来てから見ないけど……。隣の国の人魚だったり?」
「…………。実は……」
「ったくよぉ。いい気なもんだなぁ。えっ?」
薄橙に縞模様をした人魚が話し出そうとしたそのとき、見慣れない人魚が三人の間に割って入ってきました。
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