第2話目覚めた令嬢と大声の侵入者
フランは健やかに眠る少女を前に、自らに課された指令と戦っていた。
——噂の令嬢を、そこらへんの適当な男とくっ付けておやり——
(そうは言われましても!!こんな清楚な子に変な男あてがっちゃやばいっしょ!!)
この少女が実際に清楚かどうかなんてわからない。話したこともないのだから。
けれど、真っ黒なセミロングの髪、寝具から覗く指は細くて白く、爪はローズクォーツのように優しいピンク色。絵に描いたような清楚っぷりに、フランの中では、勝手にそのイメージで固定された。
「あなた、だあれ?」
「ほら声まで清らか!……って、うおおおおお?!!」
ぐるぐると一人葛藤している間に、少女は目覚めていたようだ。
(まだどうするか決めてなかったのに!どうする、どうする俺!?)
少女は何の警戒心も持たない様子で、ぼんやりとフランを見つめるだけ。まだ少し眠そうに開いたまぶたから、紅茶のような温かみのある深い茶色の瞳が覗いている。
「あ、もしかして、新しい召使さん?」
「……は?」
きょとんとするフラン。
「ふふ、なんだか緊張しちゃう。だってあなたみたいに若い男の人の召使さんがお部屋に来るの、初めてで。」
少女は、フランが答える前に、白い頬を薄紅に染めつつ話し続けた。
「私の名前はパパたちから聞いてると思うけど……ピシュカ・ファルファラです。あなたのお名前を聞いてもいい?」
「俺はフラン……じゃなくて!おかしいだろ、こんな妙齢のお嬢さんの部屋に男の召使なんか!しかも真夜中に!あり得ねーだろ!」
「え、え?急にどうしたの?大声出さないで、怖い……っ」
ピシュカは思わずシーツを引き寄せ、隠れるように体を縮こませた。見開いた目に、ほんのりと涙が滲みかけ——
「!!??わ、悪い、驚かせる気はなくてだな……!泣くなって!」
(おいおい、こんなピュアすぎ天使ちゃん、ますますどうすりゃいいんだよ?!)
ここまでウブとか聞いてない!もっとこう、鼻持ちならない高飛車娘とかだったら、任務への罪悪感も少しはマシだってのに……!
「と、とにかく乱暴はしねえから!ピシュカっつったな?かわいい名前じゃん、鳥さんみたいで……」
取り繕うように話しかけると、廊下から召使いらしき中年女性の声が。
「……ちょっと!ピシュカ様のお部屋から、男の人の声がしなかった?」
(やっば。無意識に大声出してた!!)
美の女神の息子、噂の令嬢を秘密の神殿で甘やかします ぱぴぷぺスンスン @tumiki_
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