第20章「潜入作戦」

建築学校の完成まで、あと三ヶ月。


 建吾は、学校の建設を進めながら、同時に復興事業の指揮も執っていた。


 各地から報告が上がってくる。


 城壁の修復状況。道路の復旧状況。住居の建設状況。


 すべてを把握し、優先順位をつけ、人員と資材を配分する。


 元の世界で培った施工管理の技術が、ここでも活きていた。


「師匠」


 マルコが、報告書を持ってやってきた。


「北部地区の復興が、予定より早く進んでいます」


「そうか。よくやった」


「いえ、俺の力じゃありません。現地の職人たちが、頑張ってくれたんです」


 マルコは、誇らしげに言った。


 彼は、建吾が王都を離れている間、復興事業の現場監督を務めていた。最初は不安そうだったが、今では立派に役目を果たしている。


「お前も、成長したな」


「師匠のおかげです」


「俺じゃない。お前自身の努力だ」


 建吾は、マルコの肩を叩いた。


「そろそろ、独り立ちしてもいい頃だ」


「独り立ち……ですか?」


「ああ。お前には、学校で教える側に回ってもらいたい」


 マルコの目が、驚きで見開かれた。


「俺が……教える?」


「そうだ。俺一人では、全員に教えることはできない。お前のような、経験を積んだ人間が、次の世代を育てていく必要がある」


 マルコは、しばらく考え込んでいた。


 それから、ゆっくりと頷いた。


「……やってみます」


「頼んだぞ」


      ◇  ◇  ◇


 建築学校が完成したのは、魔王討伐から一年後のことだった。


 開校式には、国王をはじめ、各地の領主や貴族たちが集まった。


 建吾は、壇上に立ち、挨拶を行った。


「本日、この学校の開校を宣言します」


 建吾の声が、会場に響いた。


「俺は、内装工です。壁を立て、天井を張り、床を敷く。それが、俺の仕事です」


 会場が、静まり返った。


「この世界に来て、一年以上が経ちました。その間、多くのことを学びました。この世界の素材、この世界の魔法、この世界の人々。すべてが、俺の知らないものでした」


 建吾は、会場を見回した。


 ゴルドがいる。シルヴァがいる。マルコがいる。リーゼロッテがいる。


 そして、多くの職人たちがいる。


「だが、一つだけ、変わらないものがありました」


 建吾は、静かに言った。


「仕事への誇りです」


「俺たちは、空間を作る者です。人が生きる場所を、守る場所を、夢見る場所を作る。それは、この世界でも、元の世界でも、変わりません」


 建吾は、目の前の建物を指差した。


「この学校は、そのための場所です。ここで、技術を学び、知識を身につけ、誇りを持った職人になってください」


 会場から、拍手が起こった。


 最初は、まばらだった。


 だが、やがて大きくなり、会場全体を包み込んだ。


 建吾は、その拍手を聞きながら、静かに頭を下げた。


 新しい時代が、始まった。


 壁を立て、天井を張り、床を敷く。


 それが、建吾の仕事だ。


 この世界でも、これからも、ずっと。


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