後編・そして世界へ

■ 予選会当日(高司市・風のホール)

会場にはすでに長蛇の列ができていた。

受付を済ませ、控室に入ると、

緊張した空気と、妙に派手な衣装の人々が入り混じっている。

「すごいね…本気の人ばっかりだ」と馬場。

「私たちも本気でしょ」と明日花。

「そう、きっちりと準備してきたよね」と尾藤。

そこへ、黒子のナイトウが現れた。

「準備はできてるわよ。みんな気づいているでしょう」


■ ワンコーラスの勝負

舞台袖。

ナイトウは黒子のまま、4人を送り出した後自分もこそこそと出て行く。

ライトが眩しい。

観客のざわめきが遠くに聞こえる。

出だしのポーズ。

笑顔。

軽いステップ。

歌い始めると、

上手いわけではないが、妙に楽しい。

自分の歌を終えた出場者がクスッと笑う。

審査員も、口元が少し緩んだ。

ワンコーラスが終わると、

4人は深く頭を下げた。

4人の横で黒子のナイトウが親指を立てている。

黒子なのに、やたら目立つ。


■ 結果発表

夕方、ロビーに結果が張り出された。

「……あった!」

明子が叫ぶ。

「本番出場だ!」

4人は思わず抱き合った。

ナイトウは黒子のまま満足げにうなずいた。

「ほらね。鐘3つのチームよ、わたしたちは」


■ 本番当日

日曜の朝。

会場の外には、すでに応援に来た出場者の家族や仲間、見物客の長い列ができていた。市長も会場にいて、局の幹部と話をしているという噂。

リハーサルを終え本番が始まる。番組のテーマ曲に合わせて順に舞台に上がる。司会からゲストの紹介、地元の情報がアナウンスされる。そして出場者の歌唱が始まる。本番中は自分の順の直前まで舞台の上で他の人の曲を応援しながら待機する。

自分たちの番が近づいて舞台袖に回ると黒子のナイトウは最後の確認をした。

「いい? 緊張してもいい。でも、楽しむことだけは忘れないで」

4人はうなずいた。


■ いよいよ舞台へ

司会者の声が響く。

「次の5人組は中学時代からの仲良しグループです。」

5人は深呼吸をし、小走りで舞台中央へ向かった。

ライトが眩しい。

観客のざわめきが遠くに聞こえる。

「15番……ダンシングクイーン!」

4人は打合せ通り曲に合わせて派手なダンスを始める。20年以上前に文化祭で踊った曲だ。AkikoとBaba、BitouとAsuka。グループとしての全国デビューの瞬間だ。(了)

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