踊る女王!

@ZuoJiaFuu

前編・出場に向けて

■抽選通ったよ

ナイトウからのSNS通知が鳴ったのは、木曜の昼下がりだった。

「のど自慢、予選通ったよ。土曜集合ね」

その一文だけだった。でもその一文で明子はコーヒーを吹き出した。

──え、あれ本気だったの?

二カ月前、ナイトウが突然「申し込んだ」と言ってきた。

その後ぱったり連絡が途絶え、みんなで「また思いつきだろう」と笑っていた。

まさか本当に抽選に通るとは。

グループチャットは一瞬で騒然となった。

明日花「今週の土曜!?」

馬場「仕事どうしよう…」

尾藤「予選って何するの?」

ナイトウ「大丈夫。昔からやってたでしょ、こういうの」

確かに、5人は昔からこうだった。

中学の文化祭では、ナイトウの「絶対ウケる」という謎の自信に押され、

全員でヒット曲をベースに創作ダンス劇を披露し、なぜか学年優勝した。

体育祭では、応援団でもないのに勝手に応援ダンスを作って踊り、

先生に「君たち、何部?」と真顔で聞かれた。

1年前の同窓会で再会したときも、

「また何かやろうよ」と盛り上がった。

その“何か”が、まさかNHKののど自慢とは思わなかったが。


■ 去年の落選メール

明子はふと思い出した。

去年、隣県の「桜浜市文化センター」で一人で応募したときは落ちたのだ。

そのとき届いたメールは、まさに昨日のように覚えている。

定員を上回る多数のご応募をいただきましたため、

やむを得ず200組程度の方を選出いたしました。

誠に恐縮ですが、あなた様のお申し込みはその選出にもれ…

「やっぱり自己アピールが弱かったんじゃない?」

ナイトウはそのとき、妙に冷静に言った。

そして今回は、ナイトウが代表してWEBフォームを記入したのだ。


■ ナイトウの“本気の自己アピール”

「ねえ、今回の選曲理由って何書いたの?」

明日花が聞くと、ナイトウはさらっと言った。

「事実をそのままよ。

中学時代、文化祭でクラス代表として学年優勝したこと。

それから、私たち5人が3年間同じクラスで、確率にすると約168万分の1だったこと。奇跡のチームってことね。そして去年同窓会で再開し友情が続いていること。」

馬場が感心したように言う。

「それ、選考の人に刺さったんじゃない?」

「たぶんね。変なこと書かなくてよかったわ」

ナイトウは意味深に笑った。


■ 予選会前の準備

予選会はワンコーラス。

つまり、出だしの3秒で勝負が決まる。

「まず立ち位置。明子は左、明日花は右。馬場と尾藤は後ろで軽くステップ」

4人にコーラスでナイトウは黒子の格好で指示を出す。

黒子なのに存在感が強すぎて、逆に目立つ。文化祭もナイトウは表に出なかったのだけど今回は5人で申し込んだので出ないわけにはいかなかった。

「笑顔!もっと自然に!」

「自然ってどうやるの!?」

「馬場、ステップが盆踊りになってる」

「尾藤、緊張で固まらない!」

「明日花、完璧すぎて逆に浮いてる!」

「明子、真面目すぎて合唱コンクールみたい!」

練習はドタバタだったが、

ハモると妙に“味のある”音になる。

歌は上手いわけではないが、楽しさが伝わるタイプだ。

「これは…鐘2つね」

ナイトウが黒子のまま断言した。

「なんで分かるの!?」

「経験よ。あと衣装が決め手になるわ」


■ 衣装づくり

衣装は白を基調に、少しキラキラ。

明子と明日花が中心となって、百均のスパンコールと布用ボンドで仕上げた。

馬場は不器用すぎて戦力外。

尾藤はボンドをこぼして床を固めた。

「なんか青春だね」

「中学のときから変わってないよね、私たち」

ナイトウは黒子のまま言う。

「もっとキラキラを増やして」

「黒子のくせに派手好きだな!」

4人が一斉にツッコんだ。

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