第4話

「博士……この『魔導励起爆弾』で一つの都市を全滅させるつもりだったのですか?」



エイリルの声は震えていた。手元の設計図から導き出された計算結果は、あまりに凄惨だった。爆心地から半径数キロメートル以内では、核兵器を越える爆風で人間はおろか、全ての建物がバラバラになり潰れる。


「効率的だろう? 毒ガスのように風に流されず、放射能のように数十年も土地を汚さない。ただ、その瞬間に存在する構造物をすべてゴミに変えるだけだ」


イエーガーは、まるで明日の天気を話すように、平然とした態度で手元の硬くなったパンを口に運ぶ。


「効率の問題ではありません! これはあまりに非人道的です。科学者として、一線を越えている!」


「一線、か。エイリル少佐、お前が今開発している『新型魔導収束砲』はどうなんだ? あれは貫通した部位の分子構造を崩壊させ、傷口は二度と塞がらない。……私の『爆弾』と、お前の『収束砲』。死ぬまでの数秒が違うだけで、どちらが道徳的だと言うつもりだ?」


エイリルは言葉に詰まった。自分の研究は『国の防衛』のためだと信じていた。しかし、イエーガーの指摘は、彼女が目を背けてきた『人殺しの研究』という言葉を白日の下に晒した。


「……私は、殺すために学問を志したわけでは……」


「だが、お前は軍服を着て、私の前に座っている。技術に善悪はない、エイリル。だが、それを作る者の『覚悟』には差が出る。お前にはまだ、自分が生み出す地獄を直視する覚悟が足りん」


イエーガーの目は、彼女を「敵国の少佐」としてではなく、「未熟な同業者」として、厳しく、そして悲しげに見ている。エイリルはその夜、自分の研究室に戻っても、設計図の線一本さえ引くことができなかった。

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