苦手

 「そういえば、クラウドさんって結構なんでもいけますよね」

ミリアムが唐突にクラウドに話しかけた。

「いきなり何の話ですか?」

「いえ、クラウドさんは好き嫌いも無いし、獣も虫もいけるじゃないですか」

「そうですね」

「それと、昨夜は入り込んだネズミを捕まえてくださったでしょう? ありがとうございました」

「いえ」

ミリアムが更に言う。

「クラウドさん、苦手なものってあるんですか?」

「ありますよ?」

「へえ。例えば?」

クラウドは少し考えてから言った。

「犬です」

「意外です。どうしてですか?」

「お嬢様が苦手なものは私も苦手なのです」

「…………」

ミリアムは黙るしかなかった。


 「ワン!」

クラウドはある日、屋敷内で犬を見かけた。ニーナの父が飼っているものである。

(ハッ! お嬢様の敵! 今すぐに排除しなければ!)

クラウドが網を持って犬を追いかける。

「クラウドさん⁉ 何をしているんですか⁉」

たまたま通りかかったミリアムに止められる。クラウドはミリアムに鬼気迫る顔で言った。

「犬……お嬢様の敵……排除……」

「ついにバグりましたね⁉」

「今すぐに排除しなければ……!」

「落ち着いてください! お父上様に今度こそ消されますよ⁉ その犬はお父上様の愛犬、ローズでしょう⁉」

「い、今すぐに……!」

そこにニーナが通りかかる。ニーナは言った。

「おすわり」

クラウドは素早くうつぶせになり、完全服従の意を示すのだった。

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