第45話 注目される存在




中位ランクの

証明書は、

思ったより

重かった。




紙一枚。




だが、

そこに

刻まれた

意味は、

軽くない。




ギルドの

ロビーに

戻った

瞬間、

空気が

変わる。




視線。




露骨な

ものから、

探るような

ものまで。




「……あれが、

 例の

 ヒーラーか」




「十三歳

 だろ……?」




囁きが

背中に

刺さる。




アレンは、

足取りを

乱さず、

掲示板の

前に

立った。




新しい

依頼が、

貼り出されて

いる。




中位向け。




報酬は

高い。




だが、

危険度も

跳ね上がる。




「……急に

 世界が

 変わった

 感じだ」




声を

かけて

きたのは、

見知らぬ

剣士。




年は

二十代

後半。




装備は

使い込まれ、

無駄が

ない。




「パーティ、

 組まないか」




直球。




「回復役が

 欲しい」




悪意は

感じない。




だが、

即答は

しない。




「……今回は

 考えさせて

 ください」




剣士は、

肩を

すくめた。




「そうか。

 まあ、

 引く手

 数多だろう

 しな」




去り際、

一言。




「気を

 つけろよ」




「注目は、

 守りにも

 なるが、

 刃にも

 なる」




その

忠告は、

胸に

残った。




執務室。




シャールは、

書類を

処理しながら

言う。




「すでに、

 指名依頼が

 来ている」




「……早い

 ですね」




「結果を

 出せば、

 そうなる」




机に

置かれた

依頼書。




内容は、

小規模

調査と

護衛。




だが、

依頼主の

名に、

アレンは

目を

留めた。




「……貴族?」




「地方

 領主だ」




「例の

 件を、

 嗅ぎつけて

 いる可能性が

 ある」




政治の

匂い。




アレンは、

眉を

ひそめた。




「無理に

 受ける

 必要は

 ない」




シャールは

続ける。




「だが、

 避け続ける

 ことも

 できん」




「中位とは、

 そういう

 立場だ」




ギルドを

出ると、

マールが

待っていた。




「……急に

 遠い

 存在に

 なった

 みたいです」




冗談

めかして

言うが、

目は

真剣だ。




「そんな

 こと

 ありません」




アレンは

首を

振る。




「ただ、

 見られる

 角度が

 変わった

 だけです」




その

言葉に、

マールは

少し

安心した

ようだった。




夕方。




宿へ

戻る

途中、

違和感。




誰かが、

距離を

保って

ついて

きている。




「……尾行?」




アレンは、

歩調を

変えず、

気配を

探る。




一人。




技量は

高くない。




だが、

素人でも

ない。




路地に

入った

瞬間、

足を

止める。




「……何の

 用ですか」




影から

現れたのは、

若い

男。




服装は

地味。




「……話を

 聞いて

 ほしい」




声は

震えて

いた。




「俺は……

 あの

 実験に

 関わって

 いた」




心臓が

一拍、

強く

鳴る。




「……続けて

 ください」




男は、

唇を

噛み、

語り始めた。




だが、

その

背後。




微かな

殺気。




アレンは、

即座に

男を

引き寄せ、

体勢を

変える。




短剣が

空を

切った。




「……やっぱり

 来たか」




ヒーラーは、

目立って

はいけない。




だが、

もう

遅い。




注目とは、

光であり、

影でも

ある。




アレンは、

守る

構えを

取り、

静かに

息を

吐いた。




中位ランクの

世界は、

歓迎だけで

できてはいない。




それでも、

退かない。




この

力を

持つ者として。

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