第43話 報告と波紋




夜明け。




辺境の

空は、

王都より

少し

低く

感じられる。




ノルディア村は、

久しぶりに

人の

声で

満ちていた。




家の

扉が

開き、

村人たちが

外へ

出てくる。




「……本当に、

 来なかった」




「狼の

 姿も

 ない……」




安堵の

ざわめき。




アレンは、

その様子を

静かに

見守っていた。




役目は

終わった。




だが、

仕事は

まだ

残っている。




「王都へ

 戻ります」




村長に

そう

告げる。




「礼を

 させて

 くれ」




「いえ」




アレンは、

首を

振った。




「報告が

 必要です」




「それが、

 僕の

 仕事です」




村を

発つ

直前、

老人が

近づいて

きた。




「……あんた、

 ヒーラー

 なんだろう」




「はい」




「昔、

 こんなことが

 あった」




老人は、

低い

声で

語り出す。




「魔物が

 操られた

 事件が

 な」




「その時も、

 逃げた

 術者が

 おった」




胸の

奥が

冷える。




「捕まらな

 かった

 んですか」




「ああ」




「国の

 内部に

 関わる

 話だと

 言われてな」




それ以上は、

語られ

なかった。




アレンは、

深く

頭を

下げ、

村を

後にした。




帰路。




歩きながら、

頭の

中を

整理する。




魔物操作。




実験と

称した

男。




王国軍。




偶然では

ない。




だが、

証拠は

少ない。




王都

到着は、

三日後。




ギルドに

入ると、

視線が

集まった。




「……帰って

 きた」




「一人で

 行った

 んだよな」




アレンは、

そのまま

執務室へ

向かう。




シャールは、

すでに

待っていた。




「……話せ」




報告は、

簡潔に、

正確に。




魔物の

行動。




笛の

音。




術者の

存在。




逃走。




すべてを

聞き終え、

シャールは

目を

閉じた。




「……やはり

 動き

 出したか」




「ご存じ

 だったん

 ですか」




「噂

 程度には

 な」




「だが、

 証拠が

 なかった」




アレンの

報告書を

指で

叩く。




「これは

 波紋を

 呼ぶ」




「お前の

 名前も、

 な」




一瞬、

緊張が

走る。




「悪い

 意味では

 ない」




「だが、

 目立つ」




「覚悟は

 あるか」




アレンは、

即答

しなかった。




少し

考え、

答える。




「……逃げる

 つもりは

 ありません」




「ヒーラーは、

 見なかった

 ふりを

 しません」




シャールは、

小さく

笑った。




「その

 言葉を

 待っていた」




その後、

ギルド内で

動きが

あった。




調査班の

再編。




情報の

共有。




そして、

アレンへの

評価更新。




「中位ランク、

 正式審査

 対象」




掲示板に

張り出され、

ざわめきが

広がる。




「早すぎ

 ないか」




「ヒーラー

 だぞ?」




視線は、

疑念と

期待が

混じって

いた。




マールが、

心配そうに

声を

かける。




「……大丈夫

 ですか」




「はい」




アレンは

微笑んだ。




「少し、

 忙しく

 なりそう

 ですね」




その

裏で、

確実に

歯車は

動いている。




魔物を

操る

存在。




王国の

影。




そして、

その

中心に

立たされつつ

ある、

一人の

ヒーラー。




アレンは、

ギルドの

窓から

外を

見た。




空は

晴れている。




だが、

風向きは

変わり

始めていた。




中位ランク編は、

次の

局面へ

進む。

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