第42話 操られた獣




月は、

雲に

隠れたり、

姿を

見せたりを

繰り返して

いた。




村外れの

草地。




アレンは、

身を

低くし、

呼吸を

整える。




狼型魔物は、

依然として

村を

囲んだまま

動かない。




「……命令を

 待っている」




その

様子は、

狩りとは

明らかに

違っていた。




魔物は

本来、

空腹に

正直だ。




無駄な

待機は

しない。




「つまり、

 誰かが

 制御して

 いる」




アレンは、

視線を

森の

奥へ

向ける。




そこに、

人の

気配。




しかも、

隠す気が

ない。




「……来る」




次の

瞬間。




笛の

音が

響いた。




高く、

乾いた

音。




狼たちが、

一斉に

頭を

上げる。




赤く

光る

瞳。




「っ……!」




魔物が

動いた。




一直線に、

村へ。




「させない!」




アレンは、

前へ

出る。




即座に、

自己強化。




※防御強化

→ 皮膚と

 筋肉を

 魔力で

 覆い、

 衝撃を

 和らげる

 補助。




同時に、

回復魔法を

常時展開。




※自動回復

→ 軽傷を

 即座に

 癒す

 持続型魔法。




狼が

跳ぶ。




速い。




だが、

アレンは

退かない。




「……落ち着け」




心拍を

抑え、

動きを

読む。




一体目を

かわし、

二体目の

爪を

受ける。




衝撃。




だが、

痛みは

浅い。




「効いてる……!」




自分の

強化が、

確実に

身を

守って

いる。




三体目が

背後へ

回る。




「っ……!」




間に

合わない。




そう

思った

瞬間。




狼の

動きが、

一瞬

鈍った。




「……?」




魔力の

流れが

乱れた。




原因は、

笛の

音。




音程が

ずれた。




「……操者が

 未熟」




ならば、

やることは

一つ。




魔物では

なく、

操って

いる側を

止める。




アレンは、

後退しながら

治癒を

続け、

森へ

視線を

集中させた。




そこに

いたのは、

黒い

外套の

男。




年齢は

若い。




二十代

前半。




手には

笛。




「……やっぱり

 人か」




男は、

アレンを

見て、

舌打ち

した。




「チッ……

 ヒーラー

 ごときが」




その

言葉に、

アレンの

中で、

何かが

静かに

切れた。




「……魔物を

 使って

 村を

 脅す」




「それが、

 あなたの

 やり方ですか」




男は

笑う。




「脅し?

 違うな」




「実験だ」




※魔力誘導

→ 魔物の

 魔力回路に

 外部から

 干渉し、

 行動を

 制限する

 危険な技術。




「成功すれば、

 王国軍でも

 使える」




「……狂ってる」




アレンは、

魔力を

高める。




攻撃魔法は

ない。




だが、

止める

方法は

ある。




「魔力の

 流れを

 断つ」




強化を、

狼ではなく、

男に

向けて

干渉させる。




※魔力撹乱

→ 相手の

 魔力操作を

 一時的に

 不安定に

 する

 補助妨害。




笛の

音が

途切れた。




同時に、

狼たちが

苦しそうに

呻く。




赤い

瞳が、

徐々に

元の

色へ

戻っていく。




「なっ……!」




男が

後退する。




「何を

 した!」




「……元に

 戻した

 だけです」




狼たちは、

混乱し、

やがて

森へ

逃げて

いった。




沈黙。




残されたのは、

二人。




男は、

歯噛み

しながら

言った。




「覚えて

 おけ……」




煙玉。




視界が

白く

覆われる。




「っ……!」




男の

気配は、

消えた。




完全に

逃げられた。




だが、

村は

守られた。




アレンは、

その場に

座り込む。




心臓が

うるさい

ほど

鳴っている。




「……危なかった」




だが、

確信も

得た。




これは、

偶然では

ない。




意図的な

事件。




そして、

自分は

その

中心に

踏み込んだ。




村へ

戻ると、

人々が

恐る恐る

外へ

出てきた。




「……終わった

 んですか」




「はい」




アレンは、

静かに

答える。




「今夜は

 もう

 来ません」




その

言葉に、

安堵の

声が

広がった。




ヒーラーは、

癒す者。




だが、

守るために

立つことも

ある。




アレンは、

夜空を

見上げた。




中位ランクの

世界は、

思っていた

以上に

複雑で、

危険だ。




それでも、

退く気は

なかった。




この

力が、

誰かを

守れる

限り。

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