第41話 辺境の異変




王都を

出て

三日目。




道は、

徐々に

細くなり、

人の

気配も

薄れていく。




周囲は

なだらかな

丘陵と、

低い

森。




だが、

空気が

違った。




「……静か

 すぎる」




アレンは

足を

止め、

周囲を

見回す。




鳥の

声が

ない。




風は

吹いているのに、

葉擦れの

音も

弱い。




「魔物の

 縄張り……

 いや」




それとも、

人為的な

何か。




今回の

調査対象は、

魔物の

異常行動。




群れの

移動。




出現頻度の

増加。




だが、

現地の

報告は

曖昧だった。




「まずは、

 村を

 確認しよう」




目的地は、

小さな

辺境の

集落。




名は、

ノルディア村。




地図上では、

農村。




人口は

少なく、

自給自足に

近い。




夕刻。




村が

見えた。




柵は

あるが、

補修が

追いついて

いない。




門番も

いない。




「……おかしい」




アレンは、

慎重に

足を

踏み入れる。




家々は

無事。




だが、

人影が

ない。




「……誰か

 いませんか」




声を

張る。




返事は

ない。




代わりに、

扉の

軋む

音。




一軒の

家から、

老人が

顔を

出した。




「……冒険者

 か」




「はい」




アレンは、

ゆっくり

近づく。




「調査で

 来ました」




老人は、

深く

息を

吐いた。




「やはり……

 王都は

 知って

 おったか」




村の

異変は、

一週間

前から。




夜になると、

魔物が

近づく。




襲わない。




だが、

去らない。




「まるで、

 囲まれて

 おるようでな」




その

表現に、

アレンは

眉を

ひそめる。




魔物は、

本来、

効率的に

獲物を

狙う。




囲むだけ、

という

行動は

不自然。




「……種類は

 分かりますか」




「狼型が

 多い」




「だが、

 目が……

 赤く

 光って

 おった」




※狂化個体

→ 魔力の

 影響で

 理性を

 失った

 魔物。




可能性が、

頭を

よぎる。




「村の

 被害は?」




「今の

 ところ、

 ない」




「だが、

 皆、

 家から

 出なく

 なった」




アレンは、

決断する。




「今夜、

 外で

 様子を

 見ます」




「……一人で

 か」




「はい」




夜。




村外れ。




月明かり。




アレンは、

強化を

最低限に

抑え、

気配を

消す。




※隠密補助

→ 魔力の

 流れを

 静め、

 存在感を

 薄くする

 応用技。




ほどなく、

現れた。




狼型魔物。




三体。




距離を

保ち、

村を

囲む。




唸り声は

ない。




ただ、

待っている。




「……やっぱり」




アレンは、

魔力を

集中させ、

一体を

観察する。




体内に、

異質な

魔力。




人工的。




「誰かが、

 操って

 いる……?」




その

瞬間。




奥の

森で、

別の

気配が

動いた。




人。




複数。




「……黒幕は

 魔物じゃ

 ない」




アレンは、

息を

整えた。




調査は、

次の

段階へ

進む。




これは、

単なる

魔物被害

ではない。




人の

意志が

絡む、

異変。




そして、

その中心に、

自分が

立っている

ことを、

アレンは

自覚した。




「……帰れる

 保証は

 ないな」




だが、

退く

理由も

ない。




ヒーラーは、

守る者だ。




癒す者だ。




そして、

真実を

見逃さない

者だ。




アレンは、

闇の

奥を

見据えた。




中位ランクの

世界は、

静かに

牙を

剥き始めて

いた。

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