第39話 長距離護衛任務
出発は、
夜明け
前だった。
王都の
東門。
まだ
人影の
少ない
時間帯。
馬車は
二台。
積荷は、
医療物資と
交易用の
貴重品。
「……確認
終わりました」
アレンは、
護衛対象の
人数と
状態を
最終確認
する。
負傷者は
いない。
体調不良も
見当たらない。
「順調だな」
ダグが
低く
呟く。
「始まる
前は、
いつも
そうです」
アレンは、
前方を
見据えた。
長距離護衛は、
派手な
戦闘よりも、
退屈と
緊張の
積み重ねだ。
最初の
一日は、
何事も
なく
進んだ。
道は
整備され、
視界も
良好。
だが、
二日目から
様子が
変わる。
「……地形が
荒れてきた」
リナが
地図を
見ながら
言う。
「ここから
先が、
紛争地域の
外縁部だ」
カイが
剣の
位置を
直す。
アレンは、
馬車の
近くを
歩きながら、
魔力の
流れを
探る。
「……気配、
あります」
全員が
即座に
反応した。
森の
奥。
微かな
殺意。
「数は?」
「少数。
三……
いえ、
四」
「魔物では
ないな」
ダグが
断じる。
人の
気配。
「……盗賊」
※盗賊
→ 人間の
敵対集団。
知性が
あるため、
魔物より
厄介。
「止まらず
進みます」
アレンは、
即座に
判断した。
「距離を
保って
牽制」
「無理に
倒さない」
護衛の
基本。
命令は
短く、
明確。
盗賊たちは、
距離を
詰めようと
したが、
こちらの
陣形を
見て
躊躇する。
「……引いた」
カイが
呟く。
「正解です」
アレンは、
魔力を
抑えながら
言った。
「戦えば
勝てても、
消耗します」
「護衛は、
戦闘を
避ける
仕事です」
夜営。
焚き火の
周りで、
最低限の
会話。
護衛対象の
商人が、
アレンに
声を
かけた。
「……噂通り、
落ち着いて
いるな」
「そう
でしょうか」
「若い
ヒーラーが
指揮を
執ると
聞いて、
正直
不安だった」
正直な
言葉。
アレンは、
否定も
肯定も
しなかった。
「……ですが」
商人は
続ける。
「進むべき
時と、
避けるべき
時が
はっきり
している」
「それだけで、
十分です」
その
言葉に、
胸が
静かに
温かく
なる。
三日目。
最大の
難所。
狭い
峡谷。
逃げ場は
少ない。
「……通過は
一気に」
アレンの
判断に、
誰も
異を
唱えない。
強化を
最小限、
全員に
付与。
※移動強化
→ 足運びを
軽くし、
疲労を
抑える
補助効果。
結果、
奇襲は
なかった。
峡谷を
抜けた
瞬間、
全員が
息を
吐く。
「……終わったな」
「いえ」
アレンは、
首を
振った。
「目的地に
着くまで、
任務は
終わりません」
その
言葉通り、
最後まで
油断は
なかった。
そして――
目的地の
街が
見えた。
商人たちが
歓声を
上げる。
無事。
被害
ゼロ。
それが、
最大の
成果だった。
依頼完了の
報告を
終えた
後、
シャールが
一言、
告げた。
「……見事だ」
「戦闘は
最小」
「判断は
最大」
アレンは、
静かに
頭を
下げた。
長距離護衛は、
力を
誇る
場では
ない。
信頼を
積み上げる
場だ。
アレンは、
その
意味を
噛みしめながら、
次の
依頼へ
向かう
準備を
始めていた。
最強の
ヒーラーへの
道は、
今日も
静かに、
確実に
伸びている。
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