第38話 選ばれる理由




ギルドの

応接室は、

静まり

返っていた。




普段は

依頼説明や

交渉に

使われる

場所だ。




だが、

今日は

少し

空気が

違う。




「……失礼します」




アレンは、

扉を

開けて

中へ

入った。




すでに

席には、

三人の

人物が

座っている。




一人は、

見知らぬ

中年の

男。




もう

一人は、

女性。




そして――




「座れ」




シャール。




「……はい」




アレンは

静かに

腰を

下ろす。




「緊張

 しているか?」




「少しだけ」




正直な

答えだった。




シャールは

頷き、

隣の

男を

示す。




「こちらは

 王都

 交易組合の

 使者だ」




「依頼主に

 なる」




男が

軽く

会釈する。




「若いが、

 噂は

 聞いている」




「……ありがとうございます」




本題は、

すぐに

切り出された。




「今回の

 依頼は、

 指名だ」




「指名……?」




アレンの

胸が、

小さく

鳴る。




「護衛兼

 回復支援」




「長距離

 移動」




「途中、

 紛争地域を

 通過する」




条件は、

明らかに

重い。




「なぜ、

 私を?」




問いは、

自然に

口を

ついて

出た。




男は、

即答

しなかった。




代わりに、

女性が

口を

開く。




「討伐数が

 多い者は

 他にも

 います」




「魔力量が

 高い者も

 います」




「ですが――」




視線が

まっすぐ

アレンに

向く。




「あなたは

 失敗しない」




言葉は

静かだが、

重かった。




「正確には、

 被害を

 最小で

 抑える」




「撤退を

 選べる」




「そして、

 誰かを

 置き去りに

 しない」




アレンは、

息を

整えた。




「……それは、

 当然の

 ことです」




シャールが

口を

挟む。




「当然では

 ない」




「多くは、

 成果を

 優先する」




「お前は、

 人を

 優先する」




応接室が

静まる。




選ばれる

理由。




それは、

特別な

力では

なかった。




姿勢。




判断。




そして、

責任の

取り方。




「……引き受けます」




アレンは

そう

言った。




即答

では

なかった。




だが、

迷いも

なかった。




「条件は?」




女性が

微笑む。




「安全優先」




「撤退判断は

 あなたに

 委ねる」




その

一言で、

すべてが

決まった。




応接室を

出た

後、

カイが

駆け寄る。




「指名

 だって?」




「……はい」




「すごい

 じゃないか」




ダグは、

腕を

組み、

短く

言った。




「責任が

 増えたな」




リナは、

アレンを

じっと

見て、

静かに

言う。




「でも、

 変わらない」




「あなたは

 あなた」




その

言葉に、

肩の

力が

抜けた。




選ばれる

理由。




それは、

背伸びした

結果では

ない。




積み重ねた

判断の

結果だ。




アレンは、

ギルドの

天井を

見上げ、

小さく

息を

吐いた。




最強の

ヒーラーとは、

何か。




答えは、

まだ

途中だ。




だが、

少なくとも

今は――




選ばれる

理由を、

胸を

張って

受け取れる

場所に

立っていた。

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