第37話 名が広がる時




ガルド王国の

ギルドは、

昼を

過ぎても

騒がしかった。




依頼の

受注。




報告。




相談。




人の

出入りが

絶えない。




その

喧騒の

中で、

アレンは

受付前に

立っていた。




「……次の

 依頼ですね」




マールが

書類を

揃えながら

言う。




「はい。

 条件の

 合うものを」




自然な

やり取り。




だが、

周囲の

視線は

以前より

明らかに

多かった。




「……あの

 ヒーラーだ」




「地方集落の

 医療支援を

 成功させた

 って……」




「判断が

 早いらしい」




囁きが、

風の

ように

流れる。




アレンは、

聞こえて

いない

ふりを

した。




評価は、

自分で

操作できない。




できるのは、

行動だけ。




「こちらは

 商隊護衛の

 依頼です」




マールが

一枚の

書類を

差し出す。




「途中、

 危険地帯を

 通過します」




「……護衛対象は

 非戦闘員ですね」




「はい」




アレンは、

内容を

読み、

静かに

頷いた。




「受けます」




即答。




「理由は?」




マールが

確認する。




「失敗した

 場合の

 被害が

 大きい」




「そして、

 ヒーラーが

 必要です」




マールは、

一瞬

驚いた

顔を

した後、

柔らかく

笑った。




「……わかりました」




出発前、

装備確認。




仲間の

表情は、

落ち着いて

いる。




「名が

 広がってるな」




カイが

肩を

すくめる。




「悪い

 気は

 しないだろ?」




「……いいえ」




アレンは

正直に

答えた。




「少し、

 怖いです」




「期待は、

 裏切れない

 ですから」




ダグが

低く

笑った。




「なら、

 裏切らなければ

 いい」




「今まで

 通りだ」




商隊は、

五台の

馬車。




護衛は

三班。




アレンたちは、

中央を

担当した。




道中、

魔物の

気配。




数は

多くない。




だが、

位置が

悪い。




「……前方、

 停止を」




アレンが

指示を

出す。




商人たちが

戸惑いながらも

従う。




「少し

 待って

 ください」




数分後、

魔物が

姿を

現した。




もし、

進んで

いれば、

正面衝突。




「……判断、

 正解だな」




カイが

呟く。




戦闘は

短く、

被害なし。




商人の

一人が、

アレンを

見て

言った。




「……若いのに、

 落ち着いて

 いるな」




「仕事

 ですから」




それ以上の

言葉は

出なかった。




目的地に

到着した

時、

商隊の

代表が

深く

頭を

下げた。




「安心して

 任せられた」




「また、

 依頼したい」




その

言葉は、

重かった。




ギルドに

戻ると、

シャールが

呼び止める。




「アレン」




「最近、

 お前の

 名を

 よく

 聞く」




「……恐縮です」




「謙遜は

 いらん」




シャールは、

真剣な

目で

続けた。




「名が

 広がると、

 期待も

 広がる」




「時に、

 利用される

 ことも

 ある」




「それでも、

 進むか?」




アレンは、

一瞬

考え、

答えた。




「……はい」




「判断する

 力が

 ある限り」




「支えられる

 限り」




シャールは、

静かに

頷いた。




「なら、

 問題ない」




名が

広がる。




それは、

名誉では

ない。




責任が、

遠くまで

届き始めた

証だ。




アレンは、

その

重みを

受け止めながら、

次の

依頼へ

向かう。




最強の

ヒーラーへの

道は、




いつの

間にか、

多くの

人と

繋がって

いた。

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