第33話 評価の視線




森の

奥から

引き返す

途中、

空気が

微妙に

変わった。




「……見られてる」




リナが

小さく

呟く。




気配は

敵では

ない。




だが、

はっきりと

“意識”を

感じる。




アレンは

足を

止め、

周囲を

見回した。




木の

上。




岩陰。




魔力の

流れ。




「……試験官です」




断定的に

言う。




※遠隔監視

→ 試験官が

 結界越しに

 行動を

 確認する

 監査魔法。




「やっぱりか」




カイが

肩を

すくめる。




「さっきの

 戦闘、

 見られてたな」




ダグは

表情を

変えず、

前を

向いたまま

言った。




「なら、

 下手な

 動きは

 できん」




「……今まで

 通りで

 行きましょう」




アレンの

声は

落ち着いて

いた。




見られている

という

事実が、

逆に

覚悟を

固める。




評価は、

逃げられない。




ならば、

自分の

やり方を

貫く。




進行中、

小規模な

魔物との

遭遇が

続く。




無理は

しない。




避けられる

戦闘は

避ける。




必要な

時だけ

対処する。




その

姿勢が、

逆に

目立って

いく。




「……珍しいな」




木の

向こうで、

試験官の

一人が

呟いた。




「討伐数を

 稼がない」




「だが、

 消耗も

 していない」




シャールは、

腕を

組み、

静かに

見ていた。




「ヒーラーの

 判断だ」




「前に

 出ない」




「だが、

 全体を

 止めても

 いない」




その

視線は、

厳しくも

どこか

誇らしげ

だった。




一方、

アレンたちは

休憩地点に

入る。




「……魔力、

 六割」




アレンが

報告する。




「十分だな」




「想定より

 余裕が

 ある」




カイが

感心した

ように

言う。




「無理を

 していない

 証拠です」




アレンは

小さく

笑った。




十三歳。




最年少。




だが、

子ども扱い

される

場面は

もう

減っていた。




再び

進む。




すると――




別の

パーティの

痕跡。




荒れた

地面。




折れた

枝。




「……交戦後」




リナが

言う。




「しかも、

 慌てて

 撤退してる」




ダグが

眉を

ひそめる。




「追う?」




一瞬、

全員の

視線が

アレンに

集まる。




評価の

視線。




仲間の

視線。




アレンは、

ゆっくり

首を

振った。




「追いません」




「救助依頼は

 出ていない」




「私たちは

 試験中です」




「……割り切るな」




カイが

言う。




「はい」




「でも、

 正しいと

 思います」




その

判断を、

試験官たちは

黙って

記録した。




冷静。




状況把握。




感情に

流されない。




ヒーラーとして、

指揮官として、

重要な

資質。




やがて、

制限時間が

近づく。




結界の

境が

見えた。




「……終わりだ」




区域を

抜けた

瞬間、

緊張が

一気に

抜ける。




「お疲れ」




誰かが

そう

言った。




試験官が

近づいてくる。




シャールは、

アレンを

真正面から

見つめた。




「アレン」




「お前は、

 見られていた」




「最初から

 最後まで」




一瞬、

心臓が

跳ねる。




「……評価は?」




「それは、

 結果発表で

 伝える」




だが、

シャールは

続けた。




「一つ

 言えるのは」




「お前は、

 ヒーラーとして

 正しい

 視線を

 持っている」




その

言葉は、

胸の

奥に

深く

残った。




評価の

視線は、

もう

恐怖では

なかった。




進むべき

道を

照らす

光に

変わり

つつあった。

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