第31話 中位試験・開幕




朝霧が、

地面を

低く

這っていた。




試験区域の

入口には、

すでに

数組の

冒険者が

集まっている。




誰もが

口数は

少ない。




それぞれの

緊張が、

空気に

溶け込んでいた。




「……寒いな」




カイが

小さく

肩を

すくめる。




「気温より、

 気持ちの

 問題だろ」




ダグが

低く

返した。




リナは、

黙ったまま

周囲を

観察している。




アレンは、

胸の

奥で

ゆっくり

呼吸を

整えていた。




「……来ました」




視線の

先。




ギルドの

試験官たちが、

姿を

現す。




中央に

立つのは、

見覚えの

ある

人物。




「シャール……」




ガルド王国

ギルド長。




その隣に、

記録官と

補助員。




「これより、

 中位冒険者

 昇格試験を

 開始する」




よく通る

声が、

霧を

切り裂いた。




「試験内容は

 探索および

 遭遇戦への

 対処」




「討伐数では

 なく、

 判断と

 連携を

 評価する」




アレンの

胸が、

静かに

高鳴る。




「制限時間は

 六時間」




「命の

 保証は

 しない」




「だが、

 無謀な

 死は

 評価対象外だ」




その

一言が、

強く

残った。




「……生き残る

 試験」




アレンは、

仲間を

見た。




全員が

小さく

頷く。




合図と

同時に、

各パーティが

順に

区域へ

入っていく。




アレンたちの

番。




足を

踏み出した

瞬間、

空気が

変わった。




森の

奥。




音が

遠く、

静寂が

濃い。




「……結界だな」




リナが

呟く。




「外の

 音が

 遮断されてる」




※試験結界

→ 試験区域を

 区切る

 特殊魔法。

 外部介入を

 防ぐ。




進行は、

ゆっくり。




アレンは、

後方から

全体を

見る。




魔力の

流れ。




足取り。




呼吸の

乱れ。




「……一体、

 左」




小声で

伝える。




すぐに

ダグが

前に

出る。




魔物は

小型。




だが、

油断は

禁物。




戦闘は

短く、

的確に

終わった。




「損傷なし」




アレンは

即座に

確認する。




「このまま

 進みます」




判断は

早い。




時間は

限られている。




だが、

焦らない。




進むほどに、

魔物の

質が

変わっていく。




数が

増え、

動きが

鋭い。




「……魔力消費が

 増えてる」




カイが

言う。




「一度、

 休憩を」




アレンの

提案に、

誰も

異を

唱えない。




短時間の

休息。




回復魔法を

最低限、

全体に

かける。




同時に、

自分へ

強化。




※自己強化

→ 体力・反応・

 魔力効率を

 一時的に

 底上げする

 補助効果。




「……行けます」




その

言葉に、

仲間の

表情が

引き締まる。




再び

進行。




そして――




前方に、

明らかに

異質な

気配。




「……止まって」




全員が

足を

止める。




奥から、

低い

唸り声。




「想定外、

 来ます」




中位試験。




その

本番は、

ここからだった。




アレンは、

杖を

強く

握る。




守る。




判断する。




生き残る。




最強の

ヒーラーへ

至る

道の、

確かな

一歩として。

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