第29話 中位試験への招待
ギルドの
朝は、
いつもと
変わらない
はずだった。
依頼書の
紙音。
金属の
擦れる
音。
冒険者たちの
雑談。
だが、
アレンは
妙な
違和感を
覚えていた。
視線が、
多い。
それも、
隠そうと
していない
視線だ。
「……何か、
ありますか」
受付で
マールに
聞く。
彼女は、
一瞬
視線を
逸らし、
それから
微笑んだ。
「……後で、
ギルド長室に
来て
ください」
それだけ。
理由は
言わない。
アレンは、
胸の
奥が
ざわつくのを
感じた。
集合場所に
行くと、
すでに
三人が
揃っていた。
「……呼ばれた?」
カイが
聞く。
「はい。
ギルド長室に」
リナが
小さく
息を
吐く。
「……来たか」
「何が?」
ダグが
尋ねる。
「中位の
話でしょ」
即答。
その
一言で、
空気が
張りつめた。
中位ランク。
Fから
Eへ。
実力だけで
なく、
判断力、
連携力、
継続性が
問われる
段階。
十三歳の
アレンにとって、
異例とも
言える
速度だ。
「……まだ、
早くないか」
ダグが
言う。
「そう
思われるかも
しれません」
アレンは
正直に
答えた。
「でも、
逃げる理由は
ありません」
ギルド長室。
扉の
前で、
一度
立ち止まる。
ノック。
「入れ」
シャールの
低い
声。
中は、
いつも通り
簡素だった。
書類。
地図。
椅子
四つ。
「座れ」
全員が
腰を
下ろす。
シャールは、
書類を
一枚、
机の
上に
置いた。
「中位昇格
試験の
推薦状だ」
その
瞬間、
息が
止まる。
「……推薦?」
カイが
聞く。
「通常は、
一定数の
実績後だ」
「だが、
お前たちは
条件を
満たしている」
条件。
無事故。
撤退判断。
連携。
継続。
すべて、
意識して
積み上げて
きたもの。
「……内容は?」
アレンが
聞く。
「実地試験だ」
「複数
パーティが
参加する」
「競争では
ない」
「生き残りと
判断が
評価対象だ」
※中位試験
→ 実力より
安定性と
判断を
重視する
昇格試験。
「……拒否は?」
ダグが
聞く。
「できる」
「だが、
次は
いつに
なるかは
わからん」
沈黙。
四人は、
視線を
交わす。
迷いは、
少なかった。
「……受けます」
アレンが
言う。
三人も、
頷く。
シャールは、
小さく
息を
吐いた。
「一つ
忠告だ」
「中位では、
お前は
最年少に
近い」
「甘く
見られる」
「同時に、
期待も
される」
「……どうすれば」
「いつも通り
やれ」
それだけ
だった。
部屋を
出ると、
廊下の
空気が
違って
感じられた。
「……来たな」
カイが
言う。
「試験」
リナは、
表情を
変えない。
だが、
指先が
少し
震えている。
ダグは、
腕を
組み、
天井を
見上げた。
「……守るだけ
じゃ、
足りないな」
「はい」
アレンは
頷いた。
「でも、
無理は
しません」
「生きて
帰る」
それだけは、
変えない。
その日の
夜。
宿で、
簡単な
打ち合わせを
行う。
試験
想定。
想定外。
撤退基準。
全員が
口を
出す。
アレンは、
聞く側に
回る。
判断を
独占しない
と、
決めたから。
「……大丈夫だ」
カイが
言う。
「俺たちは、
もう
即席じゃ
ない」
その言葉に、
胸が
熱くなる。
中位試験は、
数日後。
それは、
通過点で
あり、
同時に
試される
場だ。
十三歳の
ヒーラーは、
静かに
覚悟を
決めた。
最強を
目指す
道は、
もう
後戻り
できない。
だが、
一人では
ない。
それが、
何よりの
力だった。
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