第28話 判断を委ねる日




朝の

ギルドは、

いつもより

静かだった。




雨の

名残が、

石床に

薄く

残っている。




アレンは、

入口の

前で

一度

深呼吸を

した。




「……今日は、

 少し

 違う」




昨夜、

ほとんど

眠れなかった。




だが、

頭は

冴えている。




昨日、

シャールに

言われた

言葉が、

まだ

胸に

残っていた。




――見るべきは、

 仲間だけだ。




それを、

どう

実践するか。




それが、

今日の

課題だった。




集合場所で、

三人が

待っていた。




カイ。




リナ。




ダグ。




いつもの

顔。




それだけで、

胸の

重さが

少し

軽くなる。




「……今日は、

 少し

 やり方を

 変えたい」




依頼を

受ける

前に、

アレンは

切り出した。




「変える?」




カイが

聞く。




「はい。

 今日の

 判断は、

 私だけで

 決めません」




三人が

こちらを

見る。




「状況判断を、

 分担したい」




「……任せるって

 ことか」




ダグが

言う。




「はい」




少し、

胸が

締めつけられる。




判断を

手放す

というのは、

怖い。




だが、

一人で

背負う

必要は

ない。




「……具体的には?」




リナが

短く

聞く。




「前衛の

 危険判断は

 ダグ」




「敵の

 動きは

 リナ」




「退路と

 撤退判断は

 カイ」




「私は、

 回復と

 全体調整に

 集中します」




沈黙。




それから、

カイが

笑った。




「……いいな」




「任されるのは

 嫌いじゃ

 ない」




ダグも、

短く

頷く。




「守りの

 判断なら、

 任せろ」




リナは、

一拍

置いてから

言った。




「責任、

 重いけど」




「……やる」




その言葉で、

決まった。




依頼は、

森と

岩場が

混じる

難地形。




視界が

悪く、

奇襲が

多い。




判断の

分担が、

試される。




現地に

入ると、

すぐに

敵影。




「……数、

 三。

 奥に

 もう

 一」




リナの

声。




「ダグ、

 無理

 するな」




アレンは

口を

出しかけ、

止めた。




――任せる。




ダグは、

一歩

引き、

盾を

構える。




「……ここは

 受ける」




判断が

早い。




カイが

横に

回り、

退路を

確保。




「……問題

 なし」




戦闘は、

安定して

進む。




アレンは、

回復だけに

集中する。




視野が、

広がる。




余計な

雑念が

消える。




次の

戦闘で、

想定外が

起きた。




地面が

崩れ、

通路が

塞がる。




「……退路、

 消えた」




カイの

声が

緊張を

帯びる。




「……撤退?」




ダグが

聞く。




一瞬、

全員が

黙る。




判断は、

カイに

委ねられている。




アレンは、

口を

出さない。




カイは、

周囲を

見渡し、

言った。




「……いける」




「短期決着。

 その後、

 岩場を

 越える」




リナが

即座に

援護。




ダグが

前に

出る。




アレンは、

必要な

分だけ

強化を

使う。




戦闘は、

激しかったが、

短かった。




全員、

無事。




岩場を

越え、

別ルートに

出た。




「……正解だったな」




ダグが

言う。




カイは、

肩を

すくめた。




「……胃が

 痛く

 なったけどな」




その

冗談に、

皆が

笑う。




帰還後。




ギルドでの

報告は、

淡々と

終わった。




だが、

空気は

いつもと

違う。




「……判断、

 分担した

 らしい」




「安定して

 たな」




噂は

ある。




だが、

アレンの

胸は

軽かった。




シャールが、

最後に

一言

言う。




「委ねる

 ことを

 覚えたな」




「はい」




「それは、

 強さだ」




夜。




宿の

部屋で、

アレンは

仲間の

顔を

思い浮かべる。




判断を

委ねる。




それは、

弱さでは

ない。




信頼だ。




一人で

立つ

必要は

ない。




共に

進めば、

視界は

広がる。




十三歳の

ヒーラーは、

また

一つ

重圧を

手放した。




それは、

中位へ

進むための、

確かな

一歩だった。

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