第26話 役割の再定義




固定パーティが

結成されて、

五日が

過ぎた。




ギルドの

空気が、

少し

変わる。




掲示板の

前で、

視線を

感じることが

増えた。




「……あの

 ヒーラー、

 固定

 組んだらしい」




そんな

囁きが、

耳に

入る。




アレンは、

気にしない

ふりを

していた。




だが、

内心では

理解している。




固定を

組んだ

という事実は、

責任の

始まりだ。




「……今日、

 少し

 時間を

 取りたい」




依頼前、

アレンは

三人に

声を

かけた。




「戦闘の

 前に?」




カイが

首を

傾げる。




「はい。

 役割を

 整理

 したいです」




四人は、

ギルド

裏手の

小部屋に

集まった。




机の

上に、

簡単な

図を

描く。




前衛。




後衛。




支援。




よくある

配置。




「……まず、

 前提から

 言います」




アレンは、

ゆっくり

話し始めた。




「私は

 回復役

 ですが、

 後ろに

 固定で

 立つ

 つもりは

 ありません」




沈黙。




ダグが、

目を

細める。




「前に

 出るって

 ことか」




「必要な

 時だけ

 です」




「無茶は

 しません」




言葉を

選ぶ。




「ただ、

 中央で

 戦況を

 見る

 役割を

 担いたい」




「……指揮?」




リナが

短く

聞く。




「はい。

 戦闘中の

 微調整を

 担当

 したいです」




誰も

すぐには

答えない。




「……理由は?」




カイが

聞いた。




「回復は、

 後手に

 回ると

 意味が

 薄れるからです」




「事前に

 動きを

 修正すれば、

 怪我そのものを

 減らせます」




※戦況把握

→ 戦闘全体を

 俯瞰し、

 危険の

 芽を

 早期に

 潰すこと。




「……ヒーラーの

 仕事じゃ

 ないな」




ダグが

呟く。




「はい」




即答。




「でも、

 私に

 向いています」




一瞬、

リナが

笑った。




「……合理的」




「嫌いじゃ

 ない」




カイも、

腕を

組んで

頷く。




「条件が

 一つ」




「無理だと

 判断したら、

 即

 撤退を

 受け入れる」




「異論

 ありません」




ダグが

最後に

言った。




「守りは

 俺が

 引き受ける」




「前に

 出る時は、

 必ず

 声を

 かけろ」




「約束

 します」




役割は

決まった。




前衛:ダグ。




機動支援:カイ。




遠距離制圧:リナ。




中央支援・判断:アレン。




その日の

依頼は、

丘陵地帯の

索敵。




見通しが

良く、

判断力が

試される。




戦闘開始。




魔物は

散開。




「……左、

 数が

 多い」




アレンが

即座に

声を

出す。




「ダグ、

 一歩

 引いて」




「了解」




カイが

横から

回り込み、

数を

減らす。




「リナ、

 奥を

 止めて」




弓が

唸る。




流れが

整う。




回復は、

一度も

使わなかった。




戦闘後、

全員が

息を

整える。




「……やりやすい」




ダグが

言った。




「無理を

 してない」




それは、

何よりの

評価だった。




帰還後、

ギルドで

小さな

騒ぎが

起きていた。




「……ヒーラーが

 指示を

 出してる?」




「回復、

 一回も

 使ってない

 らしいぞ」




アレンは、

気づかない

ふりを

して

報告書を

出す。




シャールが

目を

通し、

言った。




「役割を

 広げたな」




「はい」




「怖く

 なかったか」




「少し」




正直に

答える。




「でも、

 役割は

 自分で

 決めないと、

 他人に

 決められます」




シャールは、

静かに

笑った。




「良い

 考えだ」




夜。




宿の

部屋で、

アレンは

思う。




ヒーラー。




支援役。




判断役。




そのどれもが、

自分だ。




役割は、

固定される

ものでは

ない。




状況に

応じて、

変えて

いい。




それを

受け入れて

くれる

仲間が

いる。




それが、

何より

心強かった。




中位への

道は、

ただ

強くなる

ことでは

ない。




自分の

立ち位置を

再定義する

ことだ。




十三歳の

ヒーラーは、

静かに

その一歩を

踏み出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る