第25話 固定パーティの条件




ギルドの

朝は、

昨日より

少し

静かだった。




依頼を

選ぶ声も、

どこか

慎重に

聞こえる。




アレンは、

掲示板の

前ではなく、

広間の

端に

立っていた。




待つためだ。




声を

かけるため

ではない。




見極める

ために。




「……固定、

 か」




昨日、

シャールに

言われた

言葉が、

まだ

胸に

残っている。




固定パーティ。




同じ

顔ぶれ。




同じ

判断基準。




同じ

目的。




簡単そうで、

一番

難しい。




冒険者は、

それぞれ

事情を

抱えている。




金。




名声。




生き残り。




どれを

優先するかで、

動きは

変わる。




「……条件が

 必要だ」




自分が

何を

求めるか。




それを

はっきり

させなければ、

同じ

失敗を

繰り返す。




声が

かかったのは、

昼前だった。




「……君、

 ヒーラーだよな」




振り向くと、

背の

高い

槍使いが

立っていた。




年齢は、

二十代

半ば。




装備は

手入れが

行き届いている。




「はい」




「固定、

 探してるって

 聞いた」




噂は

早い。




「条件は?」




直球の

質問。




アレンは、

少し

考え、

答えた。




「……三つ

 あります」




相手の

眉が

上がる。




「一つ目。

 指示を

 聞けること」




「二つ目。

 撤退を

 選べること」




「三つ目。

 仲間を

 責めないこと」




静寂。




「……それだけ?」




「それが、

 一番

 難しいです」




槍使いは、

しばらく

黙り、

それから

笑った。




「……面白いな」




「名前は?」




「アレンです」




「俺は

 カイ」




握手は

なかった。




だが、

空気は

悪くない。




その後、

もう

一人。




弓使いの

女性。




短く

切った

髪。




無駄の

ない

動き。




「条件、

 聞いた」




「納得できる」




簡潔な

言葉。




「リナです」




三人目は、

剣士。




若いが、

目が

落ち着いている。




「……守り重視で

 やりたい」




「前に

 出すぎるのは

 嫌だ」




「俺は

 ダグ」




全員、

即答では

ない。




だが、

条件を

聞いても

去らなかった。




その事実が、

何より

重要だった。




簡単な

打ち合わせを

行う。




陣形。




役割。




戦闘中の

優先順位。




アレンは、

紙に

書きながら

確認する。




「……私は、

 中央支援」




「回復は

 即時。

 強化は

 限定的」




「無理だと

 思ったら、

 撤退を

 提案します」




誰も

異を

唱えない。




「……最初の

 依頼、

 軽めに

 行こう」




カイが

言う。




「様子見だ」




全員、

頷く。




初めての

依頼は、

草原の

魔物討伐。




数は

少ない。




だが、

視界が

広く、

連携が

試される。




戦闘が

始まる。




ダグが

前に

出る。




深追い

しない。




カイが

横から

突く。




リナは、

後方で

冷静に

射る。




「……いい

 流れ」




アレンは、

回復を

最小限に

抑える。




危険が

見えた

瞬間だけ、

介入。




戦闘は、

短時間で

終わった。




誰も

怪我を

していない。




「……楽だな」




ダグが

言う。




「判断が

 揃ってる」




それは、

褒め言葉

だった。




依頼

完了後、

四人は

草原に

座った。




「……これなら、

 続けられる」




リナが

言う。




「固定、

 組むか」




カイが

確認する。




アレンは、

一人ずつ

顔を

見て、

頷いた。




「お願いします」




その言葉は、

重かった。




責任も、

信頼も、

背負う

という

意味だから。




ギルドで

報告を

済ませると、

シャールが

目を

細めた。




「……揃ったか」




「はい」




「条件は?」




アレンは、

そのまま

答える。




「生きて

 帰ることを

 最優先に

 します」




シャールは、

短く

笑った。




「それで

 いい」




夜。




宿の

机の

上に、

四人分の

名前が

並ぶ。




固定パーティ。




それは、

力を

増幅させる。




同時に、

失敗も

共有する。




だが、

一人で

背負うより、

遥かに

強い。




アレンは、

ペンを

置き、

深く

息を

吐いた。




中位への

道は、

ここから

本格的に

始まる。

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