第22話 守られる側から守る側へ
渓谷での
依頼から
三日後。
アレンは、
ギルドの
二階回廊から
広間を
見下ろしていた。
人の
流れ。
声の
重なり。
その中に、
自分が
含まれている
感覚が
少しずつ
変わってきている。
「……前に
出た、
だけなのに」
それだけで、
見られ方が
変わる。
掲示板の
前に
立つと、
隣に
並んだ
冒険者が
一瞬
距離を
詰めてきた。
「……昨日の
渓谷、
お前か?」
短い
問い。
「はい」
「前に
出た
ヒーラー」
それは、
噂だった。
「……無茶だな」
「必要でした」
それ以上は
言わない。
理解されなくても
構わない。
だが、
次の言葉は
予想外だった。
「……いや、
助かった」
それだけ
言い残し、
冒険者は
去った。
胸の
奥が、
少し
温かくなる。
その日の
依頼は、
森の
奥地調査。
魔物の
数は
少ないが、
地形が
複雑。
即席
パーティ。
前衛二名。
後衛一名。
そして、
ヒーラー一名。
「……配置、
どうする?」
前衛の
一人が
聞いてくる。
今までは、
聞かれなかった。
「……分岐点では
私が
真ん中に
立ちます」
一瞬、
空気が
止まる。
「……危なく
ないか?」
「危ないです」
即答。
「でも、
どちらかが
崩れたら、
すぐ
回復できます」
判断を
言葉に
する。
前衛が
顔を
見合わせ、
頷いた。
「……任せる」
その一言が、
重い。
森は、
湿っていた。
足音が
吸われ、
気配が
読みにくい。
「……来る」
魔物は、
小型だが
素早い。
前衛が
左右に
分かれ、
対応する。
アレンは、
予定通り
中央へ。
視界が
広がる。
「……右、
深追い
しすぎ」
声を
出す。
前衛が
引き戻る。
その直後、
別方向から
魔物。
「ヒール!」
傷が
浅いうちに
回復。
※早期回復
→ 重症化を
防ぐための
判断。
戦闘は、
小刻みに
続いた。
その中で、
一瞬の
油断が
生まれる。
前衛の
一人が
足を
取られ、
倒れた。
「……!」
アレンは、
反射的に
走った。
魔物との
距離が
縮まる。
だが、
止まらない。
「ヒール!」
回復と
同時に、
自分へ
強化。
身体が
軽くなる。
倒れた
冒険者を
庇う
位置に
立つ。
「……下がって!」
その声に、
前衛が
反応。
魔物は
討たれ、
森に
静寂が
戻った。
「……すまない」
倒れていた
冒険者が
頭を
下げる。
「大丈夫です」
それは、
本心だった。
帰路。
空気は、
少し
違う。
「……ヒーラーが
守る側に
回るとは
思わなかった」
誰かが
呟く。
「……でも、
助かった」
アレンは、
歩きながら
考えていた。
守られる側。
守る側。
その境目は、
思ったより
曖昧だ。
ギルドで
報告を
終えると、
シャールが
書類から
目を
上げた。
「守ったな」
短い
言葉。
「はい」
「怖く
なかったか」
「……怖かったです」
だが、
続ける。
「でも、
守られるのを
待つより、
動いた方が
良かった」
シャールは、
小さく
頷いた。
「それが、
中位の
判断だ」
夜。
宿の部屋で
アレンは、
今日の
出来事を
書き留める。
前に
出た場面。
守った
瞬間。
失敗しかけた
判断。
「……ヒーラーは、
後ろに
いる存在」
その考えは、
間違って
いない。
だが、
それだけでは
足りない。
守られる側で
あり、
守る側でも
ある。
その両立。
それが、
次の
段階。
十三歳の
ヒーラーは、
静かに
理解し始めていた。
自分は、
もう
ただの
回復役では
ない。
戦場を
支え、
守る
存在だ。
中位ランクへの
階段は、
確かに
続いている。
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