第20話 次なる壁
王都の空は、
薄い雲に
覆われていた。
光は
弱いが、
暗くは
ない。
その中間の
曖昧さが、
今の
アレンの
立場に
よく
似ていた。
Fランクに
昇格して
数日。
依頼は
順調に
こなしている。
失敗は
ない。
負傷者も
出していない。
「……なのに」
胸の
奥に、
小さな
引っかかりが
残っていた。
ギルドの
掲示板を
見渡す。
受けられる
依頼は
増えた。
だが、
どれも
似ている。
護衛。
調査。
軽度の
討伐。
「……成長してる、
はずなのに」
足踏み。
それが、
今の
感覚だった。
「アレン」
低い
声が
背後から
聞こえた。
振り返ると、
シャールが
立っていた。
「……何か、
悩んでいるな」
図星だった。
「はい」
正直に
答える。
「壁に、
ぶつかって
いるような
気がします」
シャールは、
少し
考え、
椅子に
腰を
下ろした。
「成長が
見えなく
なったか」
「はい」
「それは、
悪いことでは
ない」
意外な
言葉。
「視野が
広がった
証拠だ」
シャールは、
ゆっくり
続ける。
「Gの頃は、
生きる
だけで
精一杯だった」
「Fになると、
周りが
見える」
「だから、
足りない
ものが
見えてくる」
アレンは、
黙って
聞いていた。
「……では、
ぼくに
足りない
ものは?」
シャールは、
即答
しなかった。
「経験では
ない」
「魔力量でも
ない」
「判断力は、
十分だ」
一拍
置いて、
言う。
「――覚悟だ」
その
言葉は、
重かった。
「お前は、
常に
正しい
判断を
している」
「だが、
常に
最善を
選んでいる
わけでは
ない」
「……?」
「傷を
負うことを
避けすぎて
いる」
「危険を
背負う
判断を、
まだ
選んでいない」
アレンは、
拳を
握った。
怖い。
それは、
事実だ。
「……ヒーラーは、
後ろに
いるべき
存在です」
「基本は
な」
シャールは
否定
しない。
「だが、
最強を
目指すなら
例外も
知れ」
「守るために、
一歩
前へ
出る
覚悟だ」
沈黙。
それは、
今まで
考えない
ように
してきた
領域。
「……次の
依頼だ」
シャールは、
封筒を
差し出した。
中には、
指定依頼書。
難易度:
F上位。
内容:
前衛負傷前提の
戦闘同行。
条件:
回復役は
一名。
「……前に
出ろ、
ということ
ですか」
「選べ」
シャールは、
静かに
言った。
「受けるも
断るも、
自由だ」
アレンは、
封筒を
見つめる。
震えは、
ない。
だが、
胸は
高鳴っていた。
「……受けます」
言葉は、
自然に
出た。
怖さより、
進みたい
気持ちが
勝った。
シャールは、
小さく
頷いた。
「それで
いい」
執務室を
出ると、
マールが
待っていた。
「……難しい
依頼ですね」
「はい」
「でも」
マールは、
微笑む。
「今の
アレンさん
なら、
大丈夫です」
その
言葉が、
背中を
押した。
夜、
宿の部屋。
アレンは、
一人
座り、
目を
閉じる。
怖い。
失敗したら。
間に
合わなかったら。
それでも――
「……進む」
ヒーラーは、
守る者。
だが、
守るために
前へ
出る
ヒーラーも
いる。
その
境界線。
それが、
次なる
壁。
十三歳の
ヒーラーは、
静かに
覚悟を
固めた。
最強へ
至る道は、
まだ
遠い。
だが、
確実に
近づいて
いた。
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