第19話 評価と噂




ギルドの

空気は、

静かに

ざわついていた。




騒がしい

わけでは

ない。




だが、

視線が

増えている。




アレンは、

その変化を

敏感に

感じ取っていた。




「……見られてる」




依頼掲示板の

前に

立つだけで、

背中に

気配が

集まる。




昨日までの

Gランク時代とは、

明らかに

違う。




Fランク。




その二文字が、

彼を

囲み始めていた。




「……あれが、

 噂の」




「子どもの

 ヒーラーだろ?」




「回復だけ

 じゃない

 らしい」




小声。




聞こえない

ふりを

する。




だが、

無視は

できない。




評価とは、

実力だけで

決まらない。




噂が、

形を

作る。




受付で

依頼を

出すと、

マールが

一瞬

目を

上げた。




「……おはよう

 ございます」




「おはよう

 ございます」




それだけの

やり取り。




だが、

書類を

確認する

手が、

少し

止まった。




「……この依頼、

 もう

 受けられるんですね」




「はい」




マールは、

小さく

頷いた。




「評価、

 上がって

 います」




事務的な

言葉。




だが、

重い。




今回の

依頼は、

護衛。




隊商の

後方支援。




ヒーラー

一名。




同行は、

三人。




現地集合。




待ち合わせ

場所には、

年上の

冒険者が

集まっていた。




視線が

一斉に

向く。




「……若いな」




「……でも、

 名前は

 聞いた」




噂は、

先に

着いている。




「よろしく

 お願いします」




礼儀正しく

頭を

下げる。




最初は、

距離が

あった。




戦闘も、

なかった。




だが、

隊商が

襲われた

瞬間、

空気が

変わる。




小型魔物の

群れ。




数が

多い。




「……後方!」




声を

上げる。




護衛が

反応し、

被害を

抑える。




一人が

傷を

負った。




「ヒール!」




即座に

回復。




回復量を

抑え、

魔力を

温存。




※魔力管理

→ 戦闘全体を

 見据えて

 使う

 考え方。




戦闘は、

短時間で

終わった。




被害は、

軽微。




「……助かった」




護衛の

一人が

そう

言った。




それだけで、

十分だった。




帰路、

会話が

増える。




「噂、

 本当だったな」




「判断が

 早い」




「……ヒーラーの

 見本みたいだ」




褒め言葉に、

浮かれない。




噂は、

良い時ほど

危険だ。




ギルドへ

戻ると、

報告書は

即座に

処理された。




シャールが、

目を

通す。




「……安定している」




それが、

最大の

評価。




掲示板に

戻ると、

また

視線。




今度は、

違う。




期待と、

警戒。




「……評価、

 上がったな」




自覚する。




だが、

それ以上に

強く

思ったことが

ある。




「……噂に、

 振り回される

 わけには

 いかない」




最強の

ヒーラーに

なるには、

冷静さが

必要だ。




夜、

宿の部屋。




紙と

ペンを

広げる。




今日の

判断。




良かった

点。




改善点。




「……まだ、

 足りない」




その

言葉で、

締めた。




噂は、

風のように

流れる。




だが、

積み重ねた

判断は、

消えない。




十三歳の

ヒーラーは、

静かに

評価を

受け止めていた。




それは、

次の

試練への

前触れでも

あった。

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