第17話 昇格判定
ギルドの
大広間は、
いつもより
静かだった。
朝の依頼掲示が
終わり、
人の流れが
落ち着いた
時間帯。
アレンは、
入口近くの
長椅子に
腰を下ろし、
手を
膝の上に
置いていた。
「……落ち着け」
そう
言い聞かせても、
心臓は
正直だ。
少し、
早い。
救助依頼から
戻って
三日。
その間、
何も
言われていない。
それが、
良い意味か、
悪い意味か。
「……アレン」
名を
呼ばれ、
顔を
上げる。
マールだった。
「ギルド長が、
お待ちです」
「……はい」
立ち上がると、
足に
わずかな
緊張が
走る。
執務室の
扉は、
重い。
ノックを
してから、
中へ
入る。
シャールは、
机の向こうで
腕を
組んでいた。
その横には、
数人の
ギルド職員。
「座れ」
短い
指示。
アレンは、
背筋を
伸ばし、
椅子に
座った。
「本題に
入る」
シャールは、
そう言って、
一枚の
書類を
差し出した。
「指定依頼、
救助案件」
「完遂」
その
二文字が、
はっきりと
書かれている。
胸の
奥が、
熱く
なる。
だが、
まだ
続きが
ある。
「評価は、
三点」
「判断」
「優先順位」
「生還率」
一つずつ、
指で
示される。
「戦闘を
回避した」
「回復を
段階的に
使った」
「自己強化を
目的に
限定した」
「すべて、
適切だ」
静かな
口調。
だが、
重みが
ある。
「……ありがとうございます」
思わず、
頭を
下げた。
「まだだ」
シャールは、
手を
上げて
制した。
「昇格とは、
信頼だ」
「一度の
成功では、
測れない」
空気が、
引き締まる。
「だが――」
その
一言で、
視線が
集まった。
「お前は、
これまで
一度も
判断を
誤っていない」
「報告書も、
正確だ」
「虚勢が
ない」
それは、
評価として、
最高に
近い。
シャールは、
ゆっくりと
立ち上がり、
宣言する。
「アレン」
「本日付で、
ランクFへの
昇格を
認める」
一瞬、
音が
消えた。
耳鳴りの
ような
静寂。
次の瞬間、
マールが
小さく
息を
吸ったのが
わかった。
「……はい」
声が、
震えないよう、
意識する。
「ただし」
条件が、
続く。
「お前は、
依然として
単独行動が
多い」
「今後は、
依頼選択を
制限する」
「過信するな」
アレンは、
真っ直ぐ
頷いた。
「はい」
過信など、
できる
はずが
ない。
自分は、
まだ
十三歳だ。
外に
出ると、
マールが
笑顔で
迎えた。
「おめでとう
ございます」
「……ありがとうございます」
「でも」
マールは、
少し
声を
落とす。
「無茶は、
本当に
しないで
ください」
「はい」
それは、
約束では
なく、
覚悟だった。
掲示板の
前に
立つ。
自分の
ランク表示が、
確かに
変わっていた。
G → F
その
一文字の
違い。
だが、
責任は
大きく
変わる。
「……ヒーラー」
小さく
呟く。
回復役は、
最後まで
立っていなければ
ならない。
逃げても
いい。
戦わなくても
いい。
だが、
判断からは
逃げられない。
ルンバ村を
出た日の
自分を
思い出す。
不安と、
期待と、
怖さ。
今も、
それは
変わらない。
ただ、
一つ
増えたものが
ある。
「……自信」
根拠の
ない
ものではない。
選択を
積み重ねた
結果だ。
アレンは、
掲示板から
離れ、
出口へ
向かった。
次の
依頼が、
待っている。
ヒーラーとして。
冒険者として。
そして――
最強を
目指す者として。
その道は、
まだ
始まった
ばかりだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます