第15話 ランク昇格の条件
ギルドの朝は、
雨音と
ともに
始まった。
石畳を
叩く水音が、
王都の喧騒を
少しだけ
遠ざけている。
アレンは、
濡れた外套を
軽く払い、
ギルドの中へ
足を踏み入れた。
「……静かだ」
雨の日は、
依頼が
少ない。
その分、
人の視線が
集まりやすい。
掲示板の前に
立つと、
いつもと
違う紙が
目に入った。
「……昇格審査?」
小さく
呟く。
冒険者ランクの
昇格条件が、
一覧で
貼り出されていた。
GからFへ。
最低条件は、
単独依頼の
複数達成。
生還率。
ギルドからの
評価。
「……ぼく、
当てはまってる?」
自問する。
数字だけなら、
条件は
満たしている。
だが、
昇格とは、
数字だけでは
決まらない。
「……アレンさん」
背後から
声がした。
振り返ると、
マールが
立っていた。
「ギルド長が、
お呼びです」
胸が、
小さく
鳴る。
執務室には、
シャールと
数枚の書類が
置かれていた。
「座れ」
「……はい」
シャールは、
書類に
目を落としながら
話し始める。
「今回の
南の森の件」
「撤退判断、
評価は
高い」
「特に……
お前の
回復判断だ」
アレンは、
黙って
聞いていた。
「そこでだ」
シャールが
顔を上げる。
「ランク昇格を、
検討している」
言葉が、
静かに
胸に落ちる。
「……ですが」
すぐに、
続きが
来た。
「条件が
ある」
それは、
予想していた。
「次の
指定依頼を
完遂しろ」
「単独、
もしくは
少人数」
「内容は……
回復役としての
判断力を
試すものだ」
アレンは、
唇を
噛み、
それから
頷いた。
「……受けます」
即答だった。
シャールは、
少しだけ
驚いたように
眉を上げ、
それから
小さく
笑った。
「焦って
いないな」
「いい」
「それでこそ、
昇格を
考える価値が
ある」
執務室を
出ると、
マールが
待っていた。
「……昇格、
ですか?」
「はい。
条件付きで」
マールは、
嬉しそうに
微笑み、
それから
真剣な表情に
戻った。
「無理は
しないでください」
「昇格は、
目的じゃ
ありません」
「……はい」
それは、
よく
わかっていた。
目的は、
生き延びること。
仲間を
生かすこと。
その結果として、
ランクが
上がるだけだ。
その日の午後、
依頼内容が
渡された。
場所は、
旧街道沿いの
廃小屋。
魔物は、
少数。
だが――
「……救助?」
依頼書には、
はっきりと
書かれていた。
※負傷冒険者の
救出依頼
「……判断力、
か」
倒すことより、
生かすこと。
ヒーラーに
とって、
最も
重い課題。
夜、
宿の部屋で
アレンは
装備を
確認する。
回復薬。
魔力回復用の
簡易ポーション。
そして、
自分自身。
「……できる」
根拠は、
経験。
これまで
積み重ねた
選択。
失敗しなかった
判断。
眠る前、
自分に
回復魔法を
使う。
「ヒール」
心が、
静かに
整う。
翌朝、
雨は
上がっていた。
空気は
澄み、
道は
ぬかるんでいる。
旧街道へ
向かう途中、
アレンは
深く
息を吸った。
ランク昇格。
それは、
ゴールでは
ない。
次の
責任の
始まりだ。
「……だから、
慎重に」
自分に
言い聞かせ、
一歩、
前へ
踏み出した。
ヒーラーとして、
正しく
評価されるために。
数字ではなく、
判断で。
回復量ではなく、
生還で。
十三歳の
ヒーラーは、
昇格という
扉の前に
立っていた。
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