第9話 評価という重み
ギルドの朝は、
いつも通り
始まった。
だが、
アレンにとっては、
昨日までとは
明らかに違っていた。
「……視線が、
増えてる」
掲示板の前に立つだけで、
周囲の会話が
一瞬、
途切れる。
完全な沈黙ではない。
だが、
声量が
落ちる。
「ランクGの
あの子だろ?」
「単独で
境界に
行ったって……」
「ヒーラーなのに?」
アレンは、
聞こえないふりをして、
依頼書を
一枚ずつ
確認した。
自分は、
変わっていない。
回復しか
使えない。
攻撃魔法も、
派手な剣技も
ない。
それなのに、
周囲の評価だけが
変わっていく。
「……これ、
受けられますか?」
選んだのは、
低難度の
討伐依頼。
複数人向けだが、
魔物は弱い。
受付のマールは、
一瞬
目を丸くし、
すぐに
笑顔に戻った。
「問題ありません」
「……でも、
パーティを
組みますか?」
「いいえ。
一人で」
即答だった。
マールは、
少しだけ
真剣な顔になる。
「無理は
しないでください」
「はい」
そのやり取りを、
近くにいた
冒険者たちが
見ていた。
「……止めないのか」
「ギルドが?」
「止められない
理由が
あるんだろ」
その言葉に、
胸が
ざわつく。
理由。
自分は、
理由を
背負うような
存在なのか。
依頼先の森は、
静かだった。
鳥の声。
風に揺れる
木々。
「……落ち着こう」
アレンは、
深呼吸し、
自分に
回復魔法を使う。
「ヒール」
淡い光。
心拍が、
ゆっくり
整う。
※精神安定
→ 回復魔法に付随する
副次的効果。
恐怖や緊張を
和らげる。
魔物が現れる。
数は、
三体。
弱い。
だが、
油断はしない。
距離を取り、
避け、
必要な時だけ
回復する。
戦闘は、
短時間で
終わった。
「……問題なし」
身体も、
魔力も、
まだ余裕がある。
これが、
自分の戦い方。
帰還すると、
シャールが
待っていた。
「報告は?」
「完了です。
負傷なし」
「……そうか」
シャールは、
しばらく
黙っていた。
「アレン」
「お前は、
評価され始めている」
「それは、
良いことでもあり、
重いことでもある」
アレンは、
静かに
聞いていた。
「期待は、
人を
押し潰す」
「特に、
子どもにはな」
「……はい」
「だから、
選べ」
「受ける評価も、
距離も、
自分でだ」
胸に、
重く
響く言葉だった。
その夜、
宿の部屋で、
アレンは
一人、
天井を見つめた。
強くなりたい。
だが、
急ぎすぎてはいけない。
守りたい。
だが、
無謀には
なれない。
評価は、
力ではない。
責任だ。
十三歳の少年には、
まだ
重すぎるもの。
それでも――
「……進む」
小さく、
そう
呟いた。
自分の歩幅で。
回復しながら。
立ち止まりながら。
ヒーラーとして、
生きるために。
評価という重みを、
胸に抱きながら。
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