第2話 冒険者ギルドという場所
ガルド王国は、
アレンが想像していたより
ずっと大きかった。
高い石壁に囲まれ、
門の前には行き交う人々。
商人、兵士、旅人。
そして――
武器を持つ者たち。
「ここが……王都」
思わず、
小さく息を呑む。
ルンバ村では見なかった
鉄の剣、
革の鎧、
背丈ほどある槍。
それらを自然に
持ち歩く人々が、
当たり前のように
そこにいた。
アレンは、
自分の軽装を見下ろす。
杖と、
最低限の服。
どう見ても、
場違いだった。
「……大丈夫」
自分に言い聞かせ、
門をくぐる。
街の中は、
音で溢れていた。
呼び込みの声。
馬車の音。
子どもたちの笑い声。
その中心に、
ひときわ大きな建物が
見えてくる。
石造りで、
堂々とした正面。
看板には、
剣と盾の紋章。
「冒険者ギルド……」
ここが、
アレンの目的地だった。
扉を開けると、
中はさらに騒がしい。
掲示板の前で
依頼書を眺める者。
酒場で
談笑する者。
傷だらけの冒険者が
腕を組んで座っている。
「……すごい」
圧倒されながらも、
アレンは
受付カウンターへ向かった。
「いらっしゃいませ!」
明るい声が、
耳に届く。
カウンターの向こうには、
柔らかな笑顔の女性。
栗色の髪を
肩まで伸ばし、
清潔感のある服装。
「冒険者ギルドへ
ようこそ。
ご用件は何でしょうか?」
「あ、えっと……
冒険者登録を」
声が、
少し震えた。
女性は一瞬、
アレンの年齢を
確認するように見て、
にこりと笑った。
「大丈夫ですよ。
登録は何歳からでも
可能です」
「私はマール。
ギルドの案内を
担当しています」
その言葉に、
胸の緊張が
少しだけ和らいだ。
「アレンです。
ルンバ村から来ました」
「ルンバ村……
ああ、北の方の
小さな村ですね」
知ってもらえていたことに、
少しだけ驚く。
「では、
こちらにお名前を」
紙と羽ペンを
差し出される。
慣れない手つきで
名前を書く。
「次に、
簡単な適性確認を
行いますね」
案内された部屋は、
静かで、
中央に水晶が置かれていた。
「この水晶に
手を触れてください」
言われるまま、
アレンは
そっと手を置く。
水晶が、
淡く光った。
「……ヒーラーですね」
マールが
確認するように言う。
「はい。
回復魔法だけ
使えます」
その言葉に、
マールは
少しだけ首を傾げた。
「だけ、ですか?」
「……はい」
水晶の光は、
それ以上
強まらなかった。
「では、
登録ランクは――
Gになります」
ランクG。
最下位。
それは、
アレン自身も
予想していた。
「戦闘能力が
ほとんどないため、
最初は
簡単な依頼から
お願いしますね」
マールの声は
優しかったが、
事実は
変わらない。
「わかりました」
アレンは
静かに頷いた。
登録証を受け取り、
ギルドの中へ戻る。
周囲の視線が、
ちらりと
こちらを向いた。
「……子ども?」
「ヒーラー?
しかもソロか?」
ひそひそと、
声が聞こえる。
胸が、
少しだけ痛んだ。
掲示板の前に立つ。
そこにある依頼は、
どれも地味なものだった。
薬草採取。
配達。
害獣の確認。
「これなら……」
一番簡単そうな
薬草採取を選ぶ。
依頼書を持って
受付へ戻ると、
マールが少し驚いた顔をした。
「一人で、ですか?」
「はい。
パーティには
入れないと思うので」
マールは
一瞬考え、
それから微笑んだ。
「無理は
しないでくださいね」
ギルドを出た瞬間、
空気が変わった気がした。
もう、
村の治療役ではない。
冒険者。
たとえ
ランクGでも。
指定された森へ向かい、
薬草を探す。
その途中――
茂みが、
不自然に揺れた。
「……っ」
反射的に、
後ずさる。
現れたのは、
小型の魔物。
ゴブリン。
「……出た」
教本でしか
見たことがない存在。
剣も、
盾もない。
逃げるしかない。
そう思った瞬間、
足がもつれた。
転び、
地面に倒れる。
ゴブリンが
迫ってくる。
「……っ、ヒール!」
無意識に、
自分へ
魔法を使った。
光が、
身体を包む。
その瞬間――
身体が、
軽くなった。
「……え?」
立ち上がる。
足に、
力が入る。
走れる。
さっきより、
速く。
「……なに、これ」
必死に森を抜け、
安全な場所まで
逃げ切る。
胸が、
激しく上下する。
だが、
息切れは
すぐに治まった。
「回復……
しただけじゃない」
身体が、
明らかに
強くなっている。
それが、
アレンの運命を
大きく動かす
最初の瞬間だった。
彼はまだ知らない。
この力が、
ヒーラーの常識を
壊すものだということを。
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