第3話:止まる時間
その時は突然訪れた。
朝起きて、宿題があることを思い出して、自分の部屋で慌ててた時。
「時間が止まってくれないかな?」
そんなことを考えたら、
全ての音が聞こえなくなった。
なんだろ?って思ったけど、
学校へ行こうと鞄を手に…持てない。
机に張り付いてびくともしなかった。
少し怖くなってきて、部屋を出ようとしてドアノブに手をかけて
下に…降りない。
ドアを叩いても音がしない。
「お母さん!」って叫んでも頭の中で響いてるだけ。
まだ寝てて夢見てるのかな?って布団に入ろうとしたけど、
柔らかい布団が固くて動かない。
パニックになってドアを叩き続けても音もしない、揺れもしない。
「怖いよぅ!!!お母さーん!!」
とにかく泣き続けた、しばらくすると周りの音が聞こえてきて
お母さんが部屋に飛び込んできた。
「おかあさ〜〜ん、怖いよ〜」
抱きついて泣きじゃくる私に
「
時間が止まったの、大丈夫よ」
「初めてだもんね、怖かったね、もう大丈夫よ?大丈夫」
そう言ってお母さんはそっと抱きしめてくれた。
その日は学校をお休みして、いろいろなことをお母さんから教わった。
前に教えられた4点をなれるまで毎日続けること。
さらに時計がなくても時間を正確に頭の中で刻めるようにすること。
頭の中で前もって動く順番を考えるようにすること。
雨や雪の日は外で時間を止めない。
覚えきれないくらいの注意があった。
それからは毎日、時間が止まってもできることを覚えていったけど……
「この能力って、あまり役に立たないよね」
お母さんに言ったことがある。
苦笑いしながら
「そうね、使いにくいわね、でもね、ちゃんと自分で使えるようにすることが、これから生きていく上で大切なことなのよ?」って教えてくれた。
勉強するにしたって
教科書を開いたページしか見れない。
ページを捲れないから。
鉛筆も持てないし、
持てたとしてもノートに書けない。
じゃあ、のんびり寝てられる?って
布団に入ったまま時間を止めた……
布団が動かないので寝返りも打てないし身動きもほぼできない。
ただ身動きができないだけの拷問。
雨の日に外で時間を止めてみた……。
雨にも濡れない代わりに
雨粒が空中で止まって動かないので、
やっぱり身動きができなかった。
ほぼ立ってるだけだったよ。
時間が動く時に人に見られてると、
突然現れたみたいになる。
逆に見られてる状態で
時間を止めて移動すると、
消えたように見えちゃう。
だから人目がある場所では使えない。
授業中に止めてみたけど、
机や椅子も動かないので
やっぱり身動きができない。
開いた教科書とノートが読めるだけ。
人目がなければ自分の足で30分間移動はできる。
だから中学校では陸上部に入って長距離を選んだ。
少しでも移動距離を伸ばすために……
副産物はスタイルが良くなったこと?
もちろん能力は使えない。
試験勉強もすごい楽になった。
大きな紙に問題と解答と解き方を書いて広げておいてから時間を止めると
集中できるので眺めて覚えられた。
役に立ったのは能力を使うために覚えた時間感覚と段取り。
何をするにも時間の把握と先に何をしておくか段取りを考える。
そのことは時間を止めていない時も習慣でするようになった。
暮らしの中で「時間を効率よく使う」という大事なことが身に付いた。
お母さんから親戚も使えることを教えてくれたけど、誰が使えて誰が使えないかは秘密みたいなの。
女の子は初潮を迎えたら、
男の子は精通したら、
時間を止められるようになる。
そして子供が生まれたら自分では使えなくなることも知った。
親戚みんなが仲がいいのも、事業が成功するのも、なんとなく理解する。
時間の把握とするべきことへの段取りが上手だから仕事も上手くまわる。
仲がいいのは、秘密を共有して漏れないようにしてるんだね。
だから、あっくんも使えるかも?
でも内緒なの。
私もあっくんも
「もしかして」って思ってるだけ。
でもいいんだ、
あっくんは彼氏になったんだもん。
私はあっくんの彼女なんだもん。
合格して一緒に高校に行こうね、
あっくん。
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